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【今、伝えたいこと】日本唯一のNHL選手・福藤豊の叫び 進歩なきマイナー競技者へ「選手任せは続かない」

NHLで戦った当時24歳の福藤、若手に伝えたいのは遠回りの大切さ【写真:Getty Images】
NHLで戦った当時24歳の福藤、若手に伝えたいのは遠回りの大切さ【写真:Getty Images】

若手に伝えたいこと「簡単に得た答えは…」、五輪出場で「見てみたい」景色とは

 紆余曲折の末にNHLの空気を吸ったからこそ、後輩たちに還元できるものがある。日本の正GKの座を奪う選手が出てこない今、最短距離で答えを求めようとする若い世代に伝えたい。これからのアイスホッケー界を背負っていく選手たちへ言葉をぶつけた。

「答えって簡単に出ないということを、みんなにわかってほしい。一つの問題をクリアすると、きっとまた新しい問題や目標が生まれてくる。その繰り返しだと思うんですよ。僕なんかはオリンピックに出たい、日本でメジャーなスポーツにしたいという思いがありながらも、何か達成できているわけではなく、常にもがいている。

 答えに早くたどり着こうとするのではなく、もっともっと自分の競技に苦しんでもいいんじゃないかな。たぶん、簡単に得た答えは自分のものにならない。悩んだ時、すぐに答えを出してくれる人を見つけるのではなく、自分で考えてみていろんなことを試してみる。失敗も繰り返すだろうけど、そこで出た答えは必ず自分のものになる。そういう道もいいんじゃないかな。もがきながら自分で答えを出して、いい選手になっていってほしい」

 もがきながら得たからこそ、また壁にぶつかった時に対応できる。アイスホッケーに限らず他の競技でも、さらに言えばスポーツだけでなく、コロナ禍で多くが制限された今も役立つ思考かもしれない。「自分ができることを最大限に考えながら答えを出していかないと」。アイスホッケー人生を全うしながら、愛する競技を盛り上げるために頭をフル回転させて答えを探している。

「僕はこの競技に出会えてよかった」

 胸を張って言える。生身の足では出せないスピード感、激しいコンタクトの合間に見せる華麗なパスが好きだ。ソルトレークから北京まで、6度も過ぎ去った五輪出場のチャンス。2月に夢が絶たれ「3次予選に懸けていた。正直、この先どうしようかなと思っていた」と燃え尽きたような気持ちにもなった。

 ただ、わずかに残った火種は消せなかった。

「年齢的に考えても次の五輪予選に僕が参加できるか凄く難しいし、参加しているのもどうかなと思う。でも、最大限やって出し切った感じもあったけど、やっぱり本当に悔しかった。オフにいろんなことを振り返ると、もう一回目指してみたい気持ちになる。オリンピックがやっぱりアスリートとして最大の目標。今はまた挑戦したい気持ちがあります」

「俺でいいのかな」と葛藤がありつつ「呼んでもらえて光栄。呼ばれたからにはベストを尽くす」と日の丸に身を捧げる覚悟がある。アイスホッケーに出会ってもうすぐ30年。そこまでして五輪を目指す理由は何なのか。やはり競技を思う純粋な気持ちからだった。

「やっぱり男子の日本代表が五輪に出た時、アイスホッケーに対する世間の目がどう変わるのか、それを見てみたい。僕たちが目指してきたものによって『ここまで変わるんだ』となるのか、『あれ、こんな感じだったのか』と思うのか。そういうものを感じてみたい。女子の注目度が一気に変わった部分を見てきたし、男子だったらどうなるのかな。それを見てみたいと常に思っています」

 アイスホッケー界に吹きすさぶ北風を止められるのか。イタリア開催の2026年大会は43歳。目尻のしわが増えても、夢は年をとらない。

■福藤 豊(ふくふじ・ゆたか)

 1982年9月17日生まれ。北海道釧路市出身。小3からアイスホッケーを始め、宮城・東北高に進学。2000年アジア杯で高校生としては初の日本代表入り。01年コクド入団後、02年に約半年の米国留学を経験。04年6月のNHLドラフトでロサンゼルス・キングスから8巡目(全体238位)指名を受けた。下部組織のAHL、ECHLでプレーし、06年12月にNHL初昇格。07年1月にデビューした。現在はアジアリーグのH.C.栃木日光アイスバックスに所属。ポジションはGK。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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