体操男子監督・水鳥寿思は“考える人” 既存の枠超えるアイディアが日本を強くする
トップと同時にジュニア世代の強化にも注力「ジュニア世代はかなり重要」
強化本部長として、ジュニア世代のレベルアップにも取り組むが、ここでも方針にブレはない。U-21強化選手(大学生)、ジュニアナショナル選手(U-18、U-15)を選考し、選手一人一人の現状を把握、トップチームに近づくためのアドバイスを送る。ただ、経験の浅いジュニア世代は引き出しが少ないため、ティーチングの要素も時には必要。例えば、2019年の世界体操選手権に高校生として史上2人目の出場を果たした橋本大輝には「冬場にここを強化したら代表に入れるかもしれない」とポイントを伝授。代表合宿の体験を通じて、学びの機会を与え、意識改革をサポートした。
「ある種、特別扱いと言えば特別扱いなんですけど、そういうこともしながらジュニア選手の力を引き上げることは意識しています。代表を強化するにはジュニア世代はかなり重要。最終的に、日本が強くなるためには子どもたちが体操をできる施設を身近に作ることが大事だと思うんですよね」
代表監督・強化本部長という役割と同時に、2018年には神奈川県川崎市内に「水鳥スポーツクラブ(MSC)」を開校した。本格的な体操競技施設を作り、2歳以上の子どもたちを対象に体操と触れ合う環境を提供し、プログラムの監修にも当たっている。
「まずは体操ができる場所がないと始まらない。川崎市は人口150万人を超える政令指定都市ですが、僕らの施設が初めての本格的な体操競技場だったようです。オープニングには市長さんまで来て喜んでいただいたんですよ。ただ、僕らは民間なので、どうしても収益性を考える必要もあり、どんどん作るわけにもいかない。そこを“官”と“民”とで上手に役割分担ができるといいですよね」
スポーツの強化・発展・環境整備を語る時、「お金」の話を避けては通れない。競技団体としてスポンサー契約をしたり、トップレベルのプロ化を図ったり、それぞれに努力してみても、一部のメジャースポーツを除く多くの競技関係者にとって、頭が痛いところであることは間違いない。