体操男子監督・水鳥寿思は“考える人” 既存の枠超えるアイディアが日本を強くする
体操男子の日本代表を率いる水鳥寿思監督は、驚くほどのアイディアマンだ。その頭の中は日本体操界の発展を願い、常にフル回転。国際大会で好成績を残すためにはどうしたらいいか、選手の長所を伸ばすにはどうしたらいいか、どうすればいい人材を生み出せるのか、ファンに体操の面白さを伝えながら強化資金を生み出す仕組みを作ることはできないか。いろいろなアイディアが頭の中を駆け巡るが、現役を終えるまで自身が指導者になるという考えはゼロだったという。
史上最年少32歳で代表監督&強化本部長に就任「僕としては青天の霹靂」
体操男子の日本代表を率いる水鳥寿思監督は、驚くほどのアイディアマンだ。その頭の中は日本体操界の発展を願い、常にフル回転。国際大会で好成績を残すためにはどうしたらいいか、選手の長所を伸ばすにはどうしたらいいか、どうすればいい人材を生み出せるのか、ファンに体操の面白さを伝えながら強化資金を生み出す仕組みを作ることはできないか。いろいろなアイディアが頭の中を駆け巡るが、現役を終えるまで自身が指導者になるという考えはゼロだったという。
【特集】オリンピック2連覇を目指す体操男子 日本代表監督が大切にする論理的思考 / 体操男子日本代表・水鳥寿思監督インタビュー(GROWINGへ)
選手として出場を目指した2012年ロンドン五輪。残念ながら目標を果たせず現役生活に幕を下ろしたが、同年12月に史上最年少の32歳で代表監督と男子強化本部長に抜擢された。
「僕としては青天の霹靂。なんで自分が選ばれたんだろう、という感じがありました。正直に言うと、指導者を目指していたわけでも、なろうとも思っていなかったんですよ。だって、自分も選手としてロンドン五輪を目指していましたし、その半年後に監督になるってあり得ないじゃないですか?」
オファーが届いた時の衝撃を笑いながら振り返るが、異例の大抜擢とも言える決断を下した日本体操協会は、見る目があったと言っていいだろう。現役時代には「自分の存在意義」を示すため、冷静に戦略を考えながら競技と向き合っていた水鳥には、本人が気付かないうちに指導者・ディレクターとしての資質が芽生えていたようだ。代表監督として初めて臨んだ2016年のリオ五輪では、内村航平をキャプテンに擁して3大会ぶりの団体金メダルに導いた。
現役の時、同年代には冨田洋之、鹿島丈博という「本当に天才的な選手」がいた。両親は元体操選手、6人兄妹のうち4人が体操の道に進んだ“体操一家”の中で「一番の劣等生」を自認する。だが、自分の長所と短所をしっかり把握し、演技構成などの戦略を組み立てれば、試合に勝てるのではないか――。試行錯誤を繰り返した結果、アテネ五輪代表選考会を兼ねたNHK杯で3位となり、初出場したアテネ五輪では団体金メダルを獲得。自身のアプローチが間違っていなかったことを証明している。
代表監督就任後も「シミュレーションや戦略を立てるのが好き」と、基本のアプローチは変わらない。
「代表チームに誰が入るとどういう演技の組み合わせができて何点獲れるだろうか。決勝では誰がどの演技をした方がいいのか。そういったことを考えて、選手たちにも『君だったら、この種目でこれだけできると代表に入れそうだよ』とか、『今はこの練習ではなくて、あの技に注力した方がいいかもしれないね』と伝えています。一歩引いたところから選手ごとの戦略を立案している感じですね」
大前提として、体操は試合が始まれば選手が1人でやり遂げるもの。「選手が自分で気付くとか、選手が自分で作ることがすごく大事」と主体性を重んじながら、選手に寄り添い、きっかけを与えることに徹している。