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【今、伝えたいこと】「夢がない」女子高生はゴルフで変われた 笹原優美が表現する「社会貢献」のカタチ

エリートじゃない競技人生、ゴルファーである理由は「社会貢献」

 振り返れば、どんな時もゴルフが「成長」のきっかけを与えてくれた。

 初めてグラブを握ったのは11歳だった小5の時。ゴルフ好きの父に練習場に連れられて行ったことがきっかけだった。それまでは水泳、習字、タップダンス、一輪車、学習塾と幅広く習い事をこなしていた。その中に一つ、加わった感覚。「ゴルフを続けていきたいとは思ってなかった。父がやらせたそうだったので断り切れず」と笑って振り返る。転機となったのは、高2の時だった。

 法政高入学後から師事した和田泰朗コーチは「技」と同じくらい「心」を大切にする指導者だった。「何のためにゴルフをするのか」を問われ、競技の価値を考えるように。「特に将来の夢もなかった」という、どこにでもいる女子高生は変わり始めた。

「ゴルフはミスのスポーツと言われる。どんなにいい準備をしてプレーしても、自分の想像していたものとは違うショットが出たり、ハプニングが起きたりするもの。それを切り替えられる心の強さがないと、なかなかいいプレーを続けることはできない。ポジティブに考える力が問われるし、そうやって考えれば考えるほど、ゴルフは成長できていく。その奥深さが一番、楽しかった」

 学年を追うごとにのめり込んでいったゴルフ。その魅力が、日々の彩りを一変させた。どちらかというと、引っ込み思案だった性格も変わった。卒業後はエスカレーターで進学できた法大に進まず、自分を変えてくれたゴルフで生きていくことを決めた。

 小さい頃からプロを目指し、英才教育を受けることが一般的な競技において、珍しい存在だろう。だからこそ、勝ち負けを競い、高い賞金を争うだけじゃない、ゴルファーとしての理想も常に持っている。それが「社会貢献」という4文字に詰まっている。

「私はもともとプロゴルファーを目指したい気持ちでゴルフを続けてきたわけじゃない。高校で何のためにゴルフをやるか考えた時、社会貢献のためにゴルフをしたいと決め、それがずっと自分の指針になっている。これまで私がやってこられたことも自分が戦う姿を見て、応援してくれる方がハッピーを感じてくれて、そんなファンの姿を見て、逆に私も頑張る活力になっています。

 私はゴルフに成長させてもらった。ゴルフでこんなに人が変われるなんて、思ってもいなかった。ゴルフを通じて得た経験はすごく大切なこと。そういう価値をしっかりと伝えていける存在になりたいと思っています。だけど、そういう風になるには、もちろん実力が必要不可欠。だからこそ、もっともっと成績を出していけるように強いゴルファーになりたいと思っているんです」

 応援してくれる人との幸せの共有。それが、プロゴルファーとして一つの喜びであり、価値であると認識している。だから、自身のファンクラブ、SNSで積極的に発信し、コロナ禍においても東京都の「#STAYHOME週間」に賛同。思いを込めた言葉を届けた。

 この取材をしたのは14日。中国も台湾もツアー再開の見通しの情報は届いていない。しかし、本人は「まだまだ技術的に足りてない部分が多い。今日より明日、明日より明後日と成長していくことにモチベーションを感じています」と笑い、前向きだった。

「今年は1月に台湾ツアーに出場したので、通常3か月あるオフが1か月しかなかった。だから、逆にオフの間にやりたかった練習に時間を使えている感覚もある。ツアーが再開されたら、ゴルフを楽しみにしているファンの方はたくさんいるし、私もそこで活躍したい。特に、今年の目標はツアーで優勝すること。再開された時には今までより成長して戦っている姿を見てもらいたいです」

 やがて、コースに歓声が戻る日が来るだろう。その数だけ、個性が異なるプロゴルファー。一人ひとりのストーリーを知れば、また違った魅力が見えてくる。笹原優美。「戦う場所」を求め、まっすぐに道を歩み続けるゴルファーの名前を、憶えておいてほしい。

■笹原 優美(ささはら・ゆみ)

 1992年8月4日生まれ、東京都出身。小5からゴルフを始める。法政高(東京)でゴルフ部に所属し、14年から単年登録でツアープロとして活動。16年はQTランキング14位で自身初のツアーフル出場権を獲得し、19年は中国LPGAツアーに参戦。7試合に出場した。ファンクラブ「You & Me」のほか、ツイッター、インスタグラムで積極的に活動を発信している。

【笹原優美公式ファンクラブ「You & Me」】

 会員サイトでしか見ることのできないスペシャルムービー、ゴルフ練習ムービー、笹原の内面に迫るQ&Aなど、よりファンが楽しめるコンテンツを届けている。(https://yumi-golf.com/

(第19回は元ノルディックスキー・荻原健司氏が登場)

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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