7年越しの夢が幻に… 五輪選手村シェフを襲ったコロナ禍「来年を考える余裕はない」
「収束しても、元の営業形態を続けるのは難しくなるかも」
実際、テイクアウト営業に切り替えてから、大上氏は新たな問題にも直面しているそうだ。
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「基本的に、うちの店は作った後にすぐ召し上がっていただく前提でメニューを用意していますが、最近、インターネットのサイトに、『40分後に自宅で食べたけど、美味しくなかった』と口コミを書かれてしまいました。それ以来、10分以内に食べられない人お客様は、残念ながらお断りしているんです。食材の薬品加工をしていないぶん、傷みやすい。本来の味を楽しんでいただくためにはやむを得ない決断です」
大上氏は続けて、緊急事態宣言が解除されたあとの飲食業界に起こりうる変化についても語った。
「新型コロナウイルス感染症が収束しても、元の営業形態を続けるのは難しくなるかもしれませんね。例えば、飲食店の多くが完全予約制になるとか、何かしらの変化は出てくるかなと感じています。少なくとも今回のコロナ騒動で、わざわざ行列を作って食べるという文化は、少なくなっていくのではないでしょうか。誰かと美味しいものを食べるのは、幸せを感じられる瞬間の一つ。これからもそのような空間を届けていきたいと思っていますが、試行錯誤は続くとかもしれませんね」
日本国内では新規感染者の減少傾向が見られ、5月22日時点では、北海道と首都圏エリアの1都3県を除いて、緊急事態宣言が解除された。
だが、感染者数の少なかった韓国のクラブで集団クラスターが発生するなど、「第二波」の襲来や、新たな感染爆発に対する不安が、完全に払拭されたわけではない。まだ先行きが不透明な状況は続くことが想定されるが、一日でも早く、新型コロナウイルスの脅威がない平穏な日々を取り戻し、来夏の五輪を無事に迎えられる状況になることを今は願いたい。
( 白鳥 純一 / Junichi Shiratori)