7年越しの夢が幻に… 五輪選手村シェフを襲ったコロナ禍「来年を考える余裕はない」
苦しい飲食店の現状、売り上げは前年同月比でマイナス100万円
「現状は相当厳しい。4月は、前年同月と比較して100万円のマイナスでした。休業自粛要請が発令されてから、一気に売り上げが落ちましたね。リーマンショックや東日本大震災も経験しましたが、ここまでの落ち込みは今までなかった。知人の飲食店も4月の売上は軒並み60~70%ダウンと聞いています。どの飲食店も苦しんでいるのではないでしょうか」
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だが、当初は5月6日までとされていた「緊急事態宣言」は、4日に行われた安倍首相の記者会見で、5月末までの延期が発表された。5月14日には39県、21日には関西の2府1県で宣言が解除されたが、首都圏を始めとする一部地域では今もなお、発令が出されたままだ。
「ゴールデンウイークの後には、緊急事態宣言発令が解除されて、通常営業に戻れる。そう願って、多くの飲食店は耐えてきました。でも、休業自粛要請の継続によって、『飲食店はどうやって5月の家賃を払えば良いか?』という、深刻な危機に直面せざるを得なくなりましたね。特に、都心部は家賃が高い。うちも含めて、店舗を今後どうしていくかという問題に発展しつつありますね。もちろん、利益は欲しいですが、休業に対する同調圧力も感じます。『果たして本当に営業していてもいいのか?』と自問自答を繰り返しながら、今出来ることを必死でやっています」と話す。
国は国民1人あたりに10万円の「特別定額給付金」、東京都は休業に取り組んだ事業者に対して、50~100万円の「東京都感染拡大防止協力金」の給付を決めている。5月19日には、緊急事態宣言の延期に伴う2回目の「東京都感染拡大防止協力金」の実施も発表されたが、受付はおよそ1か月後の6月中旬。国も、追加経済政策の編成を進めているが、施策の内容や給付時期については、不透明な部分も残されている。
「休業の自粛を要請されるという理不尽なやられ方。自分がヘマしたわけではないのに、『何でこんなにひどい目に遭わされているんだろう?』と思っています。もし、本当に新型コロナウイルスの影響で自分の店を手放してしまうことになったとしたら、堪え難いものがありますね」と語る大上氏。
現在、お店ではお弁当などのテイクアウトメニューを販売。時間を短縮して営業を行なっている。
「やはり、お客さんにお店で食べていただくものと、テイクアウトで売るものは違います。味付けも変わりますし、容器代金がかかるので、お店の利益もそのぶん少なくなります。モチベーションが低いなかで、見切り発車をせざるを得ない状況。これでは従来のお弁当専門店に勝てるわけがないですよ。6月になると食中毒の不安も出てくるでしょうし、みんな本心では普段の営業に戻りたいんじゃないですか。『これからもずっとテイクアウトで頑張ろう』と考えている人は少ないでしょうね」