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【今、伝えたいこと】「日本だったら乗り越えられる」 JOC理事・小谷実可子が信じる21年東京五輪の価値

現役選手へ送る言葉「五輪で頑張る姿を見せることが社会に力を与える」

 今、苦境に立たされているのはスポーツ界だけではない。全ての人々が少なからぬ影響を受け、医療従事者や社会の基盤を支える人々は最前線に立ち、目に見えぬ敵と戦っている。JOCの公式ツイッターでは様々な競技のアスリートが動画でメッセージを発信している。そこにはスポーツが持つ力が込められている。

「スポーツを通じて応援をいただくアスリートは、その喜びや力を一番知っている人たち。応援を力に変えられると知っている私たちだからこそ、医療従事者の方や頑張っている皆さんを応援し、エールを届けたいと思っています。

 今、アスリートたちは練習ができない中、家でできるトレーニングをしたり、家の周りを走ったり、工夫して練習しようとしています。中には、スポンサーとの契約が切れてしまうなど、難しいことに直面している人もいる。それに加えて、やっぱり心の中では『みんなでウイルスと戦っている時にスポーツをやっていていいのだろうか』と思うこともあるんですね。延期に尽力して下さった組織委員会でも『オリンピックのことを考えている場合だろうか』と、葛藤を持っている方もいると思います。

 それを乗り越えることは大変だと思いますが、少なくとも現役アスリートに言いたいのは、社会に対しての応援や貢献は、オリンピックやスポーツからいろいろな感動をいただいた私たちOBやOGに任せてください。現役アスリートは練習をすることが一番。その結果として、オリンピックで頑張る姿を見せることが社会に力を与えることになりますから」

 小谷氏は自宅で過ごす時間を生かしながら、星野源の「うちで踊ろう」にお風呂で踊るアーティスティックスイミングでコラボするなど、見た人が笑顔になれる動画などを自身のSNSを通じて発信している。自宅では「家族全員で過ごす貴重な時間を大切に思い、丁寧に感謝の気持ちを持って生きる価値を感じつつ」過ごす日々。「忙しく過ごす中では感じられないことに私自身たくさん気が付いている。世界の人たちが共通する苦しみを乗り越えようとする中で、これからの生き方、家族との向き合い方、働き方を見つめ直すきっかけになるかもしれませんね」と話す。

「『トンネルの先には必ず光が見える』と言います。羽生結弦さんがJOCの動画メッセージで『3.11の時の夜空のように、真っ暗だからこそ見える光があると信じています』と仰るのを聞いて、本当にその通りだと思いました。こういう状況だからこそ、感じられる家族や友人のありがたさ、声を掛け合ったり助け合ったりする大切さ、今だからこそ見える景色を知る貴重な機会だとポジティブに捉えて、みんなで乗り越えていきましょう」

 世界が一つになって苦境を乗り越え、東京2020に明るい光をもたらしたい。

■小谷 実可子(こたに・みかこ)

 1966年8月30日生まれ、東京都出身。小学生からアーティスティックスイミングを始め、国際大会で入賞するなど頭角を現した。高校は米国のノースゲート・ハイスクールに単身留学し、米代表チームを率いたゲイル・エメリー氏に師事。帰国後、1985年のパンパシ水泳でデュエット優勝、ソロ2位の好成績を収め、全日本選手権で4連覇を飾る。1988年のソウル五輪では開会式で旗手を務め、ソロ、デュエットでともに銅メダルを獲得。日本の世界的躍進に貢献した。1992年のバルセロナ五輪では代表入りも出場機会はなく、五輪後に引退。現在はJOC理事として東京2020のオリンピックムーブメントの推進や選手強化のサポートにあたるほか、指導者としてアーティスティックスイミングの魅力を伝えている。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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