【今、伝えたいこと】情熱、結束、品位、規律、尊重 大西将太郎「ラグビー憲章の5つの言葉が現代に必要」
アスリートに伝えられるのは「我慢」の先にあるもの
今、日本が闘っているのは、ウイルスという敵。終息という結果を目指し、自粛という地道な我慢を続けている。そのアプローチは勝利を目指し、人並外れた練習に我慢を続けるアスリートと重なる、と見ることもできる。
アスリートは「我慢」の先にある「成果」の大きさを誰よりも知っている。そうであるとするならば、アスリートは練習動画以外にも、未曾有の危機と立ち向かっている世の中に発信できるメッセージはあるのではないか。
大西氏は言う。
「スポーツはどの競技にもルールがある。何をしてもいいわけじゃなく、ルールの中でお互い相手も味方も尊重して戦う。何をやってもいいとなったら、ラグビーなんて喧嘩になってしまう。ルールの中で自分たちができるパフォーマンスを最大限に発揮し、勝利した先に喜びとなって表れてくる。
スポーツをしている人たちは、それを知っているから我慢することができると思う。逆にアスリートからの視点で見ると、アスリートが伝えられることは我慢することの大切さと、我慢を経て得られる喜びの大きさ。アスリートが発信することによって、一般の皆さんに伝わることがあると思う」
大西氏自身は現在41歳と、まだ若い。今後については「ラグビーというものの価値を再認識してもらえる活動が中心になっていく」と言い、ラグビーW杯に向けて続けてきた競技を普及・発展させたい思いは、変わらない。
「僕にとってラグビーは自分を育ててくれたもの。いつまでも絶えることなく魅力あるスポーツだと思うので、僕を育ててくれたラグビーというスポーツを一人でも多く、魅力を発信し続けるだけ。そこはブレずに変わらず、やっていきたい。ラグビーから得られるものが社会に生きる部分は多いと思うし、競技の価値をもって、いろんなところでいろんなことに挑戦する大切さがある」
ラグビーというスポーツの価値をもっと広げるため、走り続ける。終わりなきフィールドに、情熱を携えて。
■大西 将太郎(おおにし・しょうたろう)
1978年11月18日生まれ。大阪府出身。啓光学園高(大阪)で全国高校大会で準優勝し、高校日本代表では主将を務める。同大4年に日本代表初選出。07年W杯フランス大会の1次リーグ・カナダ戦では終了直前に同点ゴールを決め、12-12の引き分けに持ち込み、日本代表のW杯連敗記録「13」ストップに貢献。代表キャップは33。トップリーグではヤマハ発動機に在籍した07年にベスト15、得点王、ベストキッカーを獲得。近鉄、トヨタ自動車織機を経て16年限りで引退した。ポジションはセンター。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)