【今、伝えたいこと】「事実は変えられない」 体操男子監督・水鳥寿思、「2021年東京五輪」に向かう覚悟
新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。
連載「Voice――今、伝えたいこと」第2回、体操男子日本代表監督からのメッセージ
新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。
日本全体が苦境に立たされる今、スポーツ界に生きる者は何を思い、現実とどう向き合っているのか。「THE ANSWER」は新連載「Voice――今、伝えたいこと」を始動。各競技の現役選手、OB、指導者らが競技を代表し、それぞれの立場から今、世の中に伝えたい“声”を届ける。
第2回は体操男子の日本代表監督、水鳥寿思氏が登場する。
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日本体操協会で男子強化本部長を務めると同時に、日本代表監督として東京五輪に向けて準備を進めていた水鳥氏。代表選手の選考は4月17日から始まる全日本個人総合選手権大会で本格化する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催が見送られ、さらには東京五輪の開催も1年延期となった。
自身も現役時代は五輪出場を大きな目標としていただけに「選手は一生に一度の、人生を懸けたチャレンジをしている。五輪開催が延期されたことは、選手によっては大きな影響があっただろう、しんどい部分はあるだろうと察します」と、やむを得ない事情であるとはいえ、目標の変更を余儀なくされた選手の心中を思いやる。だが、開催延期はすでに決定したこと。「事実は変えられない中でどうアジャストするか、自分にとってプラスに変えるか。それが選手としてすごく重要だと思っています」と、それぞれの選手が苦境をチャンスと捉えるメンタリティーを持つことに期待もしている。
「選手によって、すぐにプラスに切り替えられる選手もいれば、キツいなと感じる選手もいると思います。ただ、物は見方次第。1年延期で生まれた時間をチャンスと感じられるかが重要です。この前、萱(和磨)選手と話をしたら、この時間があるからもう一度ロペス(跳馬の大技)に取り組むことができるとか、この時間で若い選手が上がってくれば日本全体の底上げになるから団体で勝ちやすいとか、ある意味、自分のライバルになるかもしれない選手が強くなることさえもポジティブに捉えていました。
これは体操だけではなくて他のスポーツにも当てはまると思うんですが、突然の怪我やアクシデントで予定通りにならないことに対して悲観したりマイナスに捉えたりすると、今できていることも引きずられて、できなくなってしまう。起きたことにどんな意味があるのか、この時間をどう使えるかと考えるマインドは大切ですね」