[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

劇団四季→独立リーグ 高校野球未経験、異色の140km右腕は「演劇と野球の懸け橋に」

2019年は愛媛・東温市の「坊っちゃん劇場」に所属【写真:本人提供】
2019年は愛媛・東温市の「坊っちゃん劇場」に所属【写真:本人提供】

巨人の入団テスト受験を決意した、7~8年ぶりのキャッチボール

 劇団四季からフリーに転身後の2017年春。6月公演に向けた稽古の合間に、先輩俳優からキャッチボールに誘われた。ボールを投じるのも7、8年ぶり。しかも初めての硬式球だった。高校時代は強豪校の捕手だった先輩に向けて投球。思った以上に肌に合っている感じがしたという。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

「普通のキャッチボールだったんですけど、先輩が『こんなに球筋のいい球は滅多にない』と褒めてくれたんです。野球で褒められたのは久しぶりの感覚。もう少し練習してみようと思って、稽古が終わったら毎日キャッチボールしていましたね」

 投球に興じる日々の中で、野球を愛せていない自分と向き合いたくなった。「野球を100%愛せるように、全力でやって燃え尽きたい」。そんな時、たまたま3か月後に巨人が入団テストを実施するという知らせを目にした。合否にはこだわらず、入団テストに向かって全力でトレーニングに打ち込む決心をした。

 1次テストの合格基準は「50メートル走6秒3以内、遠投95メートル以上」と定められていたが、トレーニングを始めた当初は50メートル走8秒5、遠投は80メートルに満たなかった。絶望的にも思えたが、野球と向き合う気持ちから逃げなかった。

 毎晩必ず5キロのランニング、自宅近くの公園で約3時間の投げ込み、その日の限界が来るまで100メートルの全力疾走を繰り返すという猛練習を続けた。6月の舞台が終わってからはアルバイトをしながら、整骨院で針治療を受けるなどケアにも努めた。

 猛練習の甲斐あり、巨人の入団テストは1次テストを見事突破。2次で不合格になったものの、その後に受験した徳島のテストで入団を勝ち取った。「野球とミュージカルの懸け橋になる」。新たな夢ができた瞬間だった。

 投手として、最速は「未知の世界」と感じていた140キロを計測するまでに成長したが、ブランクを埋めることに焦って右腕を故障。経歴に注目されるプレッシャーとも戦う日々だった。公式戦のマウンドに上がることは叶わず、金銭面など様々な負担から1シーズンで退団となったが、ミュージカル時代のファンが球場に足を運んでくれるなど、少なからず「野球とミュージカルの懸け橋」につなげられたことはうれしかった。何より、「野球を100%愛せるようになる」という目標が達成できたことに満足できた。

1 2 3
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA Jleague
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集