14歳で訪れた岐路 五輪金候補・四十住さくらの才能は「ラストチャンス」で開花した
家計の苦労は知らなかった、子どもたちへ「スケートボードを大好きなまま練習を」
あの時、目の前の1本に集中できた理由の一つは、両親の苦労の全てを知らなかったからなのかもしれない。車の送り迎えなどの支えに感謝はしていたが、家計のことはほとんど知らなかった。
「それはお母さんが苦労していたことで、私は知らなかったからあまり苦労していない。管理してないからお金のことは全くわからない。ただ、その時は知らなかったんですけど、最近聞くようになりました。お母さんが取材の時に『スポンサーがつくまで凄くきつかった』という話をしているのが聞こえて。そうなんや、と」
親心を知った。今では多くのサポート受け、世界を相手に思う存分に戦っている。ただし、“稼ぐため”にやっているわけではない。自分より下の世代の未来を担うボーダーたちへ、願いを込めた。
「やっぱりスケートボードをしている子どもたちは、スケートボードを大好きなまま練習を続けてほしい。もうそんなこと考えてほしくはないです。お金のことを考えたら、うまくできなくなっちゃうから」
2月、誕生日の父に感謝の気持ちを込めてプレゼントを贈った。「この前一緒に買い物に行ったら、財布が凄くボロボロだったから可哀そうだなって思って(笑)。ネットで一緒に選んで財布を買ってあげました」。スケートボードを始める前は、旅行が家族の時間だった。海が大好きな母。一人娘の頭の中には、恩返しの方法が描かれている。
「今はオリンピックでいい成績を残して恩返しをしたいですね。やっぱり金メダルを獲ること。オリンピックが終わったら旅行に連れて行ってあげたいです。みんなが応援してくれてるから、金メダルを獲れるように毎日時間を無駄にしないように頑張らないといけない」
まだ18歳。土壇場で開花したさくらの才能は、どこまでも大きく咲き誇る。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)