【#キミとONETEAM】「今できることもある。勉強をすれば、将来の選択肢も増える」―元日本代表・山下裕史
終息後へ向けて準備を「この期間が良かったと思えるように」
準備の大切さは、以前からも感じていることです。2016年にスーパーラグビーのチーフスでプレーするためにニュージーランドに渡りました。開幕戦は出られたのですが、3戦目か4戦目からメンバーから外れました。家族も一緒に連れていって、言葉も通じない国で、何をやっているんだろうなって。自分の中でそういう経験が今まであまりなくて。ショックだったんですけど、どこにぶつけていいかもわからない。
そんな時にチームのスクラムコーチがすごく明るい人で、「シーズンは長い。何が起きるかわからない。自分のできる準備をしておけ。そのチャンスが来た時に、それを手放さなければお前の勝ちだ。今は我慢しかない。またシーズンは始まる。その時にこの期間が良かったと思えるようにいま、準備をしておかないといけない」とアドバイスもらって。それはすごく心に残っています。
いまも同じ状況だと思っています。もちろん僕だけじゃなくて、子どもたちにとっても日々ストレスがたまるような毎日だと思います。うちにも小学校3年生と、幼稚園の年長の2人の子どもがいます。いままでできていたことが急にできなくなった。友達にも会えない。授業も受けられない。かわいそうではあるんですが、いま我慢しないと、できなくなる期間が長くなるよって、伝えています。
できていたことが、できなくなった。でも、いまできることもたくさんあります。先は見えなくて、しんどいとは思います。僕もそうです。でも改めて自分たちがしていたことを振り返る時間でもあります。だから、この時間を無駄にしてほしくありません。
いまは運動したり、体を動かすために外には出られないことはありますけど、例えば、勉強することはできます。勉強をすると将来の選択肢が増えると思います。もしラグビーをやっている子どもなら、勉強することで将来、自分がラグビーをするうえでの選択肢が増えるかもしれません。
勉強がどうしても苦手でダメだったら、本を読んだりもできる、いままで知らなかった知識を得る時間にすることもできます。急に勉強しろとか、読書しろとか、もしかしたら難しいかもしれません。それなら少しずつでも、身近な簡単な目標をつくってもいいのかなと。毎日必ず朝7時に起きて、決まった時間に朝食を食べるとか、そんなことでもいいのかなと。毎日しっかり決まったことをやることで、自分を管理することになります。
僕もいま、しっかりと自己管理をしなくてはいけません。食事の面でも自分でメニューを考えて、妻とも相談して、なるべくヘルシーなものをとるようにしています。自分で自分を管理することはすごく大事です。
【#きょうのトライ「朝起きたら、家族にあいさつから始めましょう」】
日常生活をきっちりと。朝起きたら、家族にあいさつから始めましょう。すごく大事なことです。当然のことかもしれませんが、ありがとう、ごめんなさいをきっちりと相手に伝えましょう。
もしスポーツをやっている人なら、いまやっているスポーツ以外に興味をもってみるのもいいかもしれません。ほかの競技の映像を見てみたりすると、自分の競技の幅も広がると思います。ラグビー少年だったら、ラグビーに使える動きだなとか、新しく見えてくるものもあると思います。自分を広げられる、新しい何かに挑戦できるといいですね。
■山下 裕史(やました・ひろし)
1986年1月1日、大阪府出身。小、中学校時代は野球少年。都島工でラグビーを始め、京産大を経て、2008年に神戸製鋼入り。09年、日本代表初キャップ。15年W杯は全4試合に出場。16年はスーパーラグビーのチーフス(ニュージーランド)でプレー。19年W杯はバックアップメンバー。サンウルブズでもプレー。ポジションはプロップ。日本代表キャップ51。
(次回は前日本代表HCエディー・ジョーンズさんが登場)
(THE ANSWER編集部・角野 敬介 / Keisuke Sumino)