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サッカー“欧州組”が独1部で苦戦する理由 ドイツS級日本人コーチ、心身の「強度不足」を指摘

「ドイツの選手は小さい頃から、常に対敵のある厳しい状況でプレーしている」

 狭いゾーンで見せる香川の俊敏なターンに、大柄なドイツのDFは翻弄され続けた。

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「日本人選手の上手さは評価され重用されるようになりました。しかしドイツでも21世紀に入り育成改革が行われ、旧来のフィジカルの強さを生かす流れは一変しました。DFB(ドイツサッカー連盟)の主導で、全国的に若年層からテクニック優先の指導がスタートし、そこにフィジカルや戦う姿勢をバランス良く肉づけされた選手が育ってきました。その最初の世代が2006年地元開催のワールドカップで主力となったミロスラフ・クローゼやルーカス・ポドルスキなどでした」

 その後各年代で欧州制覇を遂げたドイツが、2014年ブラジル・ワールドカップで優勝を飾るのは周知の通りである。

「さらにドイツは外国人枠を撤廃し、トルコやアフリカなどからの移民系の選手たちも積極的に受け入れました。一時はブンデスリーガでスタメン全員が外国人というチームも出てきましたが、敢えてドイツ人の選手たちを厳しい競争の中に放り込んだのです」

 残念ながらドイツと日本のリーグ戦を比べても、戦術、強度を含めた質の差は顕著だという。

「確かに日本の選手たちは本当に頑張ってよく走るし、パスもつなぎます。ところがプレッシャーがきつくなると途端に技術の精度が落ちてしまう。まだJリーグでは、戦術的にしっかりとトレーニングされたプレッシングディフェンスを見たことがありません。一方ドイツの選手たちは小さい頃から常に対敵のある厳しい状況でのプレーを繰り返しています。プレッシングディフェンスというのは、相手を囲い込んでボールを奪うこと。ただのフォアチェックとは違う。ブンデスリーガでは、厳しいプレッシャーに遭うと慌ててしまうような選手はほとんど見当たりません」

 つまりドイツで日本人選手が苦戦を強いられているのは、厳しい状況下でも技術を発揮できる心身の強さが不足しているからだと、鈴木は指摘する。次回は、こうした両国の違いが生まれる背景について語ってもらう。(文中敬称略)

[プロフィール]
鈴木良平(すずき・りょうへい)

1949年生まれ。東海大学を卒業後、73年に西ドイツ(当時)のボルシアMGへ留学。名将ヘネス・バイスバイラーの下で学びながら、ドイツサッカー協会S級ライセンスを取得した。84-85シーズンにはブンデスリーガ1部のビーレフェルトのヘッドコーチ兼ユース監督を務めた。その後は日本女子代表初の専任監督に就任するなど女子サッカーの発展にも尽力。ブンデスリーガなどのテレビ解説者としても活躍する。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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