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普通の高校生は「ビビッてできない」 土壇場で自ら決断、堀越サッカー部監督が感嘆した選手の主体性

日本のスポーツ界で「選手主体」の指導の大切さが叫ばれる中、育成と結果を両立させているチームの1つが、堀越高校サッカー部だ。11年前、佐藤実監督がボトムアップ型の指導を導入すると、2020年度の全国高校サッカー選手権に29年ぶりの出場。21年度大会にも2年連続で出場すると、今年度も2年ぶりの全国行きを決めるなど、着実に選手主体の指導の質を高めている。それを体現したのが、選手権の東京都予選決勝。相手に先制点を許す苦しい展開の中で、選手自らが判断してシステムを変え、土壇場での同点弾とPK戦での勝利につなげる。佐藤監督がボトムアップ型でチーム作りをしてきた成果が、見事に表れた瞬間だった。(取材・文=加部 究)

選手が主体的に部活に取り組む堀越高サッカー部。主将を中心に結束して2年ぶりの全国高校選手権に臨む【写真:徳原隆元】
選手が主体的に部活に取り組む堀越高サッカー部。主将を中心に結束して2年ぶりの全国高校選手権に臨む【写真:徳原隆元】

堀越高校サッカー部「ボトムアップ指導11年目の結実」第2回

 日本のスポーツ界で「選手主体」の指導の大切さが叫ばれる中、育成と結果を両立させているチームの1つが、堀越高校サッカー部だ。11年前、佐藤実監督がボトムアップ型の指導を導入すると、2020年度の全国高校サッカー選手権に29年ぶりの出場。21年度大会にも2年連続で出場すると、今年度も2年ぶりの全国行きを決めるなど、着実に選手主体の指導の質を高めている。それを体現したのが、選手権の東京都予選決勝。相手に先制点を許す苦しい展開の中で、選手自らが判断してシステムを変え、土壇場での同点弾とPK戦での勝利につなげる。佐藤監督がボトムアップ型でチーム作りをしてきた成果が、見事に表れた瞬間だった。(取材・文=加部 究)

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 堀越高校サッカー部では新キャプテンが決まると、プレーモデルを継承しながら、キャプテンを中心に選手たちが話し合い戦術や方向性を定め磨き上げていく。監督主導のトップダウンではなく、選手たちが試行錯誤を繰り返しながら主体的に創り上げていくボトムアップ方式で部活に取り組んでいるので、実はシーズンの滑り出しから快調に突っ走るケースは少ない。しかし、時間の経過とともにチームは結束し着実に最適解へと近づいていくので、選手権を中心に終盤に集大成を表現し巣立っていくケースが多いと佐藤実は語る。

「選手たちは、失敗も成功も経験として積み上げている。目の前の試合には勝ちに行くわけですが、結果には一喜一憂せずに、負けたら必ず敗因を掘り下げ次に繋げる。みんなが『オレたちのチームでしょ』と外に引っ張られずに、自分たち自身に重きを置いて進んでいる。それが習慣になり卒業していくから、さらに夢や目標へ近づく選手、人が増えている。それは高校3年間の結果よりもっと大事だし、それこそが堀越の良さだと思っています」

 11年前にボトムアップ方式に転換してしばらくは、キャプテンの志向次第でチームの色も変わりがちだったが、最近は堀越らしさが定まってきた。

「毎年戦術やシステムは少しずつ変わっても、堀越のサッカーとしてみんなが描く絵は変わらない。それは見ている皆さんも、やっている選手たちも同じ。ボールを握って、みんなで押し込み、最終的にはゴールを奪う。まさに3年前の第99回大会(ベスト8)のサッカーです」

 そう言って佐藤監督が続ける。

「結局ベースとなるテクニックや戦術的な志向も変わらないので、トレーニングの中味もあまり変わりません。ただし3年前に比べると、今のほうが間違いなく選択肢は増えている」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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