「非カリスマ型」森保一監督の強みとは? W杯日本代表に見る強固な組織作りのヒント
森保監督は「リーダーによるフォロワーシップ」を発揮できる
森保監督のようなリーダーを端的に表すのなら、「非カリスマ型」になるでしょうか。リーダーによるフォロワーシップを発揮できるところが、森保監督の強みだと思います。
世の中には具体の世界で生きている人と、抽象の世界で生きている人に分かれます。そして森保さんは後者だろうと思います。1つひとつの現象を細かく具体的に指示するよりも、「こういうチームでありたい」というシンプルで抽象的な原則を示し、そこに向かって各々が具体的に何をすべきかを考えることでチーム作りが進められたように感じます。原則や大枠のルールは作るけど、あとは選手の考えを尊重する。具体的に何をすべきかをイメージできる選手じゃないと、おそらく対応できなかったはずです。
森保監督が出演していたテレビ番組で、試合中に予想外のことが起きた時はどうするのか、と問われた際には「私は常に“良い守備から良い攻撃”と言っているので、まずは良い守備に立ち返ります」と話していました。
自分が作った原理原則に常に忠実に生きている人なのでしょう。だから、ブレないんです。そこが森保監督の最大の魅力であり、強みであると感じます。
監督の続投が決定し、森保監督は次のW杯も目指すことになりました。すでに、「在り方」の構築が非常に巧みであることは証明されました。今度は「やり方」という部分も求められてくるはずです。
実は2010年大会の岡田監督、22年大会の森保監督ともに、選手からの直前の戦術提案を採用して功を奏しました。厳しいことを言えば、選手からの提案が出てくるか、出てこないか、これは偶然に支配されていると言わざるを得ません。提案を採用できれば選手の納得感は高まり結果につながりやすいですが、もしも選手から提案が出てこなかった時はどうするのか。そんな時こそ、監督の引き出しが試されます。「このやり方でいこう」という最適解が用意されていることが必要なのです。
決してトップダウンが悪いわけではありません。選手たちが考え抜いても納得のいく意見が出なかった時は、手遅れにならないギリギリのラインを見極めて監督が引き取り、最適解を提示する。すがるほど欲しかった最適解を示された選手たちは「それで行くしかない」となり、団結につながります。つまり、トップダウンは使い方と発動のタイミングが重要なのです。いつもトップダウンだと、選手は自分で考えなくなりますから。