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「非カリスマ型」森保一監督の強みとは? W杯日本代表に見る強固な組織作りのヒント

多くのチームの組織作りをサポートしてきた福富信也氏【写真提供:ポリバレント】
多くのチームの組織作りをサポートしてきた福富信也氏【写真提供:ポリバレント】

選手を巻き込み「納得解」を導き出す方法でチームを動かす

 私はそれを「絵具効果」と言っています。例えば、赤か青かで意見が対立した時に、いずれか1つを採用する二者択一の選び方だけでなく、「紫もできるよね」と、なるべくみんなが納得するような形を模索する。皆が納得する第3案を捻り出そうとする姿勢があると納得感が高くなります。森保監督はそういうチーム作りをしていたはずです。

 なぜ森保監督がそのように振る舞えていたかと言えば、監督という「ポジション」「威厳」を守ろうとしているのではなく、監督という「役割」を果たそうという強い意思を持っていたからにほかなりません。日本が1つでも上に行くために何をすべきか。保身ではなく最善を選んだということだと思います。

 チームが動いていく時には、次の4つの要素が作用し合っています。

[1]リーダーによるリーダーシップ
[2]リーダーによるフォロワーシップ
[3]フォロワーによるフォロワーシップ
[4]フォロワーによるリーダーシップ

[1]はグイグイと引っ張っていくタイプのリーダーシップです。[2]はリーダーとしての権限を最大限に生かしながら、フォロワーの意見を後方支援するような行動です。[3]は、リーダーの指示を忠実に実行する典型的なフォロワーシップです。そして[4]は積極的に働きかけてリーダーを動かしていくような行動です。そして森保ジャパンのチーム作りの根幹は、[2]と[4]のバランスによって成り立っていたということが窺えます。

 監督は大きな方針を提示し、その範囲内で選手が積極的に提案し、監督は意見を吸い上げて、調整し、決断する。その関係性が森保ジャパンでは上手く機能していたように思います。

 監督なのだから、自らの考えを貫き、強烈なリーダーシップを発揮してチームを率いるべきだという意見もあるでしょう。しかし、監督は当然ながら、全知全能ではありません。どんな時でもパッと最適解を出せるリーダーは稀でしょう。森保監督は、選手も巻き込んで納得解を作り上げるという方法でチームを機能させました。カタール大会で劇的な大金星を挙げたスペイン戦の背景には、直前で鎌田選手からの戦術提案があったという記事を読みました。

 これはスポーツだけではなく、ビジネスの世界でも同じことです。一見頼りないと思われるかもしれないですが、メンバーの意見に耳を傾けて納得解を導き出すということは、独裁のような予定調和が通用しません。調整力、柔軟性、決断力を合わせ持ったリーダーだからこそ成し得ることなのです。とはいえ、すべての意見を採用することは不可能なので、このタイプの監督にはブレない軸(判断基準)と、不採用になった意見への丁寧な対応が必須となります。それができなければ不満分子を増やし、結果として監督自身の首を絞めることになるからです。

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