「潰れるまで挙げる」トレーニングはもう古い 育成年代にも広がるメソッド「VBT」とは
VBTのメリットとその具体的な取り入れ方
長谷川教授によると、VBTには以下の点で大きなメリットがあるようだ。
○トレーニングの的確な強度と量を、個人の特性や日々のコンディションに合わせて調整できる。
○オーバートレーニングを避け、効率よくトレーニングできる。
では、VBTは具体的にどのように行うのか。具体的な解説をしていこう。
従来のウエイトトレーニングにおける負荷のうち、明確に把握できる数値は<1>ウエイトの質量(kg)<2>レップ数<3>セット数<4>休息時間だが、VBTではこれらに加え、計測機器をバーやウエイトに取り付けることで、1レップごとの以下のデータを計測できる。
○挙上速度(m/s)
○発揮したパワー(W)のピーク値と平均値
○実際に発揮した力(N)
○仕事量(J)
計測機器には、GymAware(ジムアウェア)やEnode(エノード)、VITRUVE(ヴィートゥルーヴ)といった専用のデバイスがあり、スマートフォンやタブレットで連携しモニターすることが可能。1レップごとの平均速度がリアルタイムで表示されるので、トレイニーはその速度が低下しないよう、常に全力で挙上することがポイントだ。
換算表に記載されている数値は、種目と重量ごとの挙上速度。単位はm/s(メートル毎秒=秒速。つまり1秒間に何m移動しているか)。そして左に記載された100~20までの数値は、1RMに対する重量のパーセンテージだ。
例えばジュニア選手がスクワットを行う場合、1RMの100%に当たる重量を挙げる速度は0.45m/s(=1秒間に0.45mすなわち45cm移動する速さ)ということ。
まず、トレーニングを行うにあたり、最初に行うことはトレーニングの目的を明確にすること。筋肥大を目指すのか、スピード筋力の向上を目指すのか、最大筋力を上げたいのか、筋力スピードを上げたいのか、スピードを上げたいのか。目的に合わせ、ターゲット速度を決定した上でウォームアップを行い、現状の挙上速度をまず測定する。
例えばジュニア選手が、1.0m/sをターゲットとしてスクワットを行うとしよう。
まずは任意の重さでウォームアップし、挙上速度が1.33m/sだったとする。その数値を換算表と照らし合わせれば、挙上した重量は「1RMの20%」ということ。そして、ターゲットとする速度が1.0m/sならば、換算表により、その日のセッションで扱うべき負荷は「1RMの50%」ということ。