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日本人指導者が“引き出し”を増やすには? サッカー用語に潜む危うさと「正しく疑う」重要性

常に疑問を持ちながら思考する大切さ

 僕は日本で学んだことをすべて否定するつもりはないし、ヨーロッパで体感していることのすべてを認めるつもりもない。ただセルビアに来て、さまざまな人と出会い、そして戦って感じたのは、多くの人が自らの中に存在するバイアスを理解しており、物事を「正しく疑うことができる」ということだ。

 自分が下した判断や行動は本当に合っているのかと、常に疑問を持ちながら思考していく。これは「クリティカルシンキング」という考え方で、彼らはそれを正しく行いながら、思考した後には失敗を恐れずチャレンジする。

 こうした本質を見抜く力があると、たとえ同じことが3度起きたとしても、原因がすべて同じだとは考えないし、ある種の経歴や結果で、現在の選手の能力や人間性をジャッジすることはない。その背景に何かあるはずだと、さまざまな可能性を自分の頭の中で考える。

 そして、こうした思考力のある人たちは、総じて“結果”ではなく“過程”を信じる。「俺はこんなに結果を出したから凄いんだ」ではなく、「俺はこんなに努力をしてきたから、この先も大丈夫」という未来志向の強い信念を持っている。

 自分の中にあるバイアスを正しく知る――。指導者としての“引き出し”を増やし、的確な判断に辿り着くためには、まずは己を知ることが第一歩になる。「確証バイアス」の影響を受けているのは間違いないが、自分が追い求める指導者像は、これでいいと「今は」思っている。

(THE ANSWER編集部・谷沢 直也 / Naoya Tanizawa)

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喜熨斗 勝史

サッカーセルビア代表コーチ 
1964年10月6日生まれ。東京都出身。日本体育大学を卒業後、高校で教員を務めながら東京大学大学院総合文化研究科に入学。在学中からベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)ユースでフィジカルコーチを務めると、97年に教員を退職しトップチームのコーチとなる。その後セレッソ大阪、浦和レッズ、大宮アルディージャ、横浜FCを渡り歩き、04年からは三浦知良のパーソナルコーチを務める。08年に名古屋グランパスに加入してドラガン・ストイコビッチ監督の信頼を得ると、15年からは中国の広州富力、21年からはセルビア代表のコーチに招かれる。日本人としては初めて、欧州の代表チームのスタッフとして22年カタールW杯の舞台に立った。
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