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大学指導者が失ってはいけない視点とは? 青学大・原晋監督が箱根駅伝「全国化」を訴え続ける理由

指導者には「社会課題の解決に結びつけられる視点が必要」

 2つ目の本質把握力は、文字通り膨大な情報に埋もれる世の中において枝葉の話やうわべの情報に左右されずに、物事の本質を追求していく力のことである。

 3つ目の提案力は、経験談やエピソードを交えながら会話ができる思考を持つことだ。

「失敗体験は真剣に向き合っての失敗は必ずしも失敗ではないと認識し、成功体験だけでなく、すべての経験を上手く構成することです」

 これらの3要素を身につけられる指導を行えば、社会の課題を解決できる人材のフレームづくりにつながっていくという考え方だ。

 それは同時に、今後のあるべきスポーツの指導者像にもつながっていく。UNIVASで理事を務める立命館学園副総長・立命館大学副学長の伊坂忠夫氏は、トークセッションの中で多様性が求められる今の時代において「指導者は学ばないと教えられない」と柔軟な思考を身につける重要性を説く中、原監督もその必要性に賛同する。

「指導者も自分の領域にとどまるのではなく、自分の領域で培ったノウハウを社会課題の解決に結びつけられる視点が必要になってくると思います。競技の勝敗だけでなく、そこにたどり着くまでのプロセス(過程)をある程度体系化、言語化させて、社会の問題点を抽出して、課題解決に生かしていく。そうした領域まで広げるような人材が、指導者にも求められると思います」

 そして原監督は、スポーツと社会の関係について、最近の学生スポーツ界の不祥事にも言及。「展開を誤って、スポーツの領域が社会のお荷物になると言われかねない現象が起こっています。そうならないよう、自らも指導に当たっていくつもりです」と気を引き締める一方、20年間、選手たちと共に寮に住み込む形でチームを強豪校に作り上げた自負もある。

「私自身は生活面における規則等、守るべきことは厳しくやりましたが、(悪い意味での)先輩・後輩の序列、監督が生活をずっと監視したり、あるいはほったらかしにするなど、そういうことはやらずに、居心地の良い空間づくりを心がけてきました。そういう空間があれば体罰やいじめ、不祥事などは起こりにくいはずです。今年のチームは、ほぼ全員が21時には寮にいて、学年に関係なくワイワイ楽しんでいますよ」

 正解のない問題を解決していくのがスポーツと社会の共通点である。特定の答えがない中、いかにより良い方向に物事を進めていくか。スポーツに携わる学生は選手のみならずマネジャー、コーチにもいる。彼らの経験は必ず、社会の課題解決につながると考えている。

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牧野 豊

1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「NBA新世紀」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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