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「なぜ日本人?」の空気を実感 セルビア代表の喜熨斗勝史コーチ、選手指導で大切にすることは?

セルビアで改めて感じるチームワークの大切さ

 だから僕は、選手との距離感は大切にしている。中心選手であるタディッチやセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチ、コスティッチ、ミトロビッチらとは常にコミュニケーションを取って、「今日こういう練習をやろうと思っているけど、意図は分かる?」とか、「今日こんな練習をしたけど、理解できた?」とフランクに話すと、彼らも「もう少し、こうしてくれたら嬉しかったな」とか、「パーフェクトだったよ」と答えてくれる。それをコーチ間でシェアして、次に進む。

 そういうコミュニケーションを繰り返したことで、今度はタディッチやミリンコビッチ=サビッチ、ネマニャ・グデリ(セビージャ)といった一流の選手が、「今日の俺のプレー、どうだった?」と僕に聞いてくる。コーチと選手が一体となり、お互いにギブ&テイクの関係を築くことでチームワークが生まれるということを、僕は今、セルビアの地で改めて実感している。

 リスクはいつでも、どこにでもあるし、リスクを負わなければ成長しない。僕もそれこそ教員を辞めた時点から、成功する保証もないなかでリスクを負ってきたし、今がマックスとも思っていない。これまで何回も、どん底に落ちるギリギリのところで這い上がってきているし、この後また落ちるかもしれない。

 でも失敗すれば、それを克服した時に自分自身が成長する。もし欧州で指導者になりたいとか、一生ピッチに立っていたいと考えている人がいるなら、まずは日本での既存のマインドセットに疑問を持つことから始めてほしい。

 次回からは「育成」をテーマに、そうした日本と欧州の考え方の違いなどについて話していきたい。

(THE ANSWER編集部・谷沢 直也 / Naoya Tanizawa)

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喜熨斗 勝史

サッカーセルビア代表コーチ 
1964年10月6日生まれ。東京都出身。日本体育大学を卒業後、高校で教員を務めながら東京大学大学院総合文化研究科に入学。在学中からベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)ユースでフィジカルコーチを務めると、97年に教員を退職しトップチームのコーチとなる。その後セレッソ大阪、浦和レッズ、大宮アルディージャ、横浜FCを渡り歩き、04年からは三浦知良のパーソナルコーチを務める。08年に名古屋グランパスに加入してドラガン・ストイコビッチ監督の信頼を得ると、15年からは中国の広州富力、21年からはセルビア代表のコーチに招かれる。日本人としては初めて、欧州の代表チームのスタッフとして22年カタールW杯の舞台に立った。
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