練習後の会話で大切なこと ミスを指摘する以上に子供が得た「成功体験」の共有を
点と点だけを見ていては分からないもの
でも、それでいいのだと思う。別に隠しているわけでも、反省してないわけでもない。でも、それ以上に上手くできたことの感動と喜びの方が大きいのだ。子供が自分の一つのプレーに会心の感触を抱いて練習から帰ってくる。それは、素晴らしいことだと思う。
帰りのバスで家に向かっている時に、急にトイレに行きたくなり、慌ててバスを降りて近くのお店に飛び込み、次のバスまで30分待つ。何もないバス停で待ってもあれなのでと、お店がありそうな地域まで歩いてみることにした。
「あれ、ここ見覚えがあるね」
長男がつぶやく。そうだった。ここは1年前、別のイベントで訪れた町。本格的なカートの体験できるコースに参加した後、当時僕の下で研修を受けていた日本人の学生と一緒に、帰りのバスを3人で20分待ったのだ。
「暑い日だったね。また会えたらいいな」
そんなことを二人で話しながら、とぼとぼと歩く。点と点だけを見ているだけでは分からない景色――。そんな時間を子供と共有できることはとても素敵で、成長を見守る親としては嬉しい瞬間だ。
【了】
中野吉之伴●文 text by Kichinosuke Nakano