プロテニス選手が福島で説いた、もう一歩頑張る練習「諦めることなく今できる全力を」
プロテニスプレーヤーの綿貫敬介(明治安田生命)が21日、福島県いわき市のテニスコート「ア・パース スタジアム」で行われた東北「夢」応援プログラムの「夢宣言イベント」に参加した。小学3年生から中学3年生まで少年少女14人を対象に約2時間のクリニックを開催。子供たちとの対面を楽しみにしていた綿貫はこの日、「試合で緊張したり、プレッシャーを感じる中で、もう一歩頑張るための練習」を伝えた。
現役プロの綿貫敬介が福島・いわきの子供たちを熱血指導
プロテニスプレーヤーの綿貫敬介(明治安田生命)が21日、福島県いわき市のテニスコート「ア・パース スタジアム」で行われた東北「夢」応援プログラムの「夢宣言イベント」に参加した。小学3年生から中学3年生まで少年少女14人を対象に約2時間のクリニックを開催。子供たちとの対面を楽しみにしていた綿貫はこの日、「試合で緊張したり、プレッシャーを感じる中で、もう一歩頑張るための練習」を伝えた。
公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた東北「夢」応援プログラムは、東日本大震災で被災した東北の子供たちが抱く夢や目標を、年間を通して応援するプログラムだ。2017年から「夢応援マイスター」として同地の子供たちとテニスを通じて交流してきた綿貫が登場すると、子供たちの顔に大きな笑みが広がった。
福島代表として全国大会に出場する子供たちが参加するなど、技術的な基礎が出来上がっている子供も多い中、綿貫は試合でのパフォーマンスをさらにレベルアップさせるためのコツを教えた。そのコツとは「諦めることなく、今できる全力を尽くす」ことだ。
「テニスのトーナメントを見ていると、プロの選手はみんな大きな声を出したり、叫びながらボールを打ち返しているよね。あれはただ単に声を出しているのではなくて、体力的にもきつい中、緊張や長く続くラリーのプレッシャーを感じながら、ギリギリの状態でプレーをしているから。そこで頑張れるかどうかは、試合の中だけでは解決することはできません。練習の中で、1試合、1ポイント、1ラリーに全力を尽くすメニューを取り入れてみてください」
必死の表情でボールに食らいつく子供たちに「いいぞ、その調子!」
そう語りかけた綿貫は「ア・パース テニスクラブ」の福嶋コーチと連携し、テニスコート2面に分かれて、きつくなった状態からもう一歩頑張る練習をスタートさせた。綿貫が担当するコートでは、子供たちは左右に打ち出されるボールをフォアハンドとバックハンドで交互にクロスサイドに返球。福嶋コーチが担当するコートではストレートに打ち返した。まずは1人当たり10球からスタートし、2周目は20球、3周目は30球と徐々に球数がアップ。始めは笑顔を見せていた子供たちも、3周目ともなると大粒の汗を流しながら、必死の表情でボールに食らいついていった。
綿貫は「いいぞ、その調子!」「いい球だ!」と子供たちの背中を後押しする声掛けをすると同時に、「打った後の1歩目を早く踏み出そう」「打ち終わったら体はできるだけ正面に向けよう」など的確なアドバイスを送る場面も。きつい練習を終えた子供たちは疲れた様子を隠さなかったが、自分が頑張れる限界値を上げた充実感も漂わせていた。
いつも以上に自分を追い込むことができた子供たちを称えた綿貫は、「全国大会でフルセットを戦うためには、この練習で50球、60球を打っても呼吸が乱れない体力が必要になります。これは練習を積み重ねること。意識的に頑張る練習をしてみてください」と期待の声を掛けた。
プロ選手が意外な告白「僕は今でも自信はありません」
東北「夢」応援プログラムに参加する子供たち10人は、来年3月まで「スマートコーチ」という遠隔指導ツールを活用し、動画やSNSを通じて綿貫のプライベートレッスンを受けることになる。この日の「夢宣言イベント」では、「わたしの将来の夢」「未来のわたしの町をどうしたい?」「1年後の約束」を夢達成ノートに書き込んで発表した。将来はプロテニスプレーヤーになるという中学1年生の櫛田翼くんが1年後の目標として「全国大会に出場したい」と堂々宣言。今回初参加の中学2年生、土方遥斗くんも将来はプロを目標とし、1年後は「県大会で上位に入り、東北大会に出たいです」と意気込んだ。
子供の頃は「幼稚園の先生になりたかった。今でもなりたいくらい」と明かす綿貫は、この日を締めくくる質問コーナーでも子供たちの言葉に真剣に耳を傾け、温かい眼差しを持って語りかけた。「どうしたら自信を持てますか?」という質問には、こんな答えを返した。
「僕は今でも自信はありません。試合直前まで『試合したくないな』と思っています。でも、自信がないのが普通じゃないかな。トッププレーヤーのフェデラー選手でも必ず勝てるという自信はないと思います。その代わり、目の前にある自分のできることを全力でやり尽くす。その結果がフェデラーを一流の選手にしているんだと思います。先のことを考え過ぎると不安になるから、目の前のことに集中して全力を尽くしましょう」
綿貫は埼玉県内の実家が運営する「グローバル・プロ・テニス・アカデミー」の一員として復興支援チャリティーイベントに参加するなど、東北を思う気持ちは強い。今回出会った子供たちが、1年後にはどんな成長を見せてくれるのか。弟でプロテニスプレーヤーの陽介のコーチとして海外遠征に出掛ける機会が増えた綿貫だが、「スマートコーチ」を介しながら子供たちを全力でサポートしていく。
(THE ANSWER編集部)