なぜ、日本サッカーは南米が苦手なのか 乾貴士の恩師が指摘する“日本人の武道精神”
サッカーはボールと時間を奪い合うスポーツ
日本サッカーが南米を苦手とするのは、伝統的なスポーツ文化に影響されているからだと指摘した。
「例えば、相撲で“はっけよい”で僕が先に立ったら行事がやり直しをさせる。剣道も白線を挟んで平等に始める。これが日本の正々堂々。すべてはセイム・タイムでスタートする。でもサッカーは違う。こっちが靴の紐を結んでいる隙に、後ろから蹴られとる。そんな戦いや。日本の外交下手と同じ。真っ正直に話し合っているうちに、もう裏取られとる」
従来の強豪高校のように、全国各地から優秀な選手をスカウト出来る環境ではなかった。限られた素材で戦う条件は、世界に出ていく日本と立ち位置が似ていた。
「サッカーはボールと時間を奪い合うスポーツ。野球と違って、1回の表の後に、相手の守りを飛ばして2回の表に持ち込むことも出来る。駆け引き次第では、こちらを速く見せたり、相手を遅くさせることも出来る」
実際に昨年のロシア・ワールドカップでは、野洲の優勝メンバーだった乾貴士が、緩急を巧みに使い分け2度も鮮やかなゴールを生み出した。小さな乾は、大舞台で見事に野洲スタイルを体現したのだった。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)