ファジーカスが好例「毎晩21時に寝て酒も飲まず…」 プロ初の全クラブ参加、外傷障害調査が育成年代に残すもの
Bリーグがきっかけとなり、一人でも多くの人が健康的な生活を送れるように
SCS推進チームは今後、データ取得領域の拡張を行っていく予定だ。例えば現在、吉岡氏が興味を持っているのが、各チームの移動距離とコンディショニングの関係性だ。
吉岡「2023-24シーズンに初優勝した広島ドラゴンフライズは地方のクラブですが、どのようなアプローチで選手のコンディションを整え、リーグを制したのか。また広島と優勝を争った琉球ゴールデンキングスは、日本一移動距離が長いチーム。日本で一番家に帰れないチームがとてもヘルシーにプレーできていた理由は何か。今後さまざまなデータを積み重ね、そういったことを解明できたらと思います」
一方で数野氏は、データの一般層向けウェルネス領域への活用可能性を示唆する。
数野「もちろんBリーグをどう良くしていくか、というのが私たちの目標ではありますが、今のデータは今後、一般層のウェルネスに向けて活用できるものがたくさんある。例えば今後取り組んでいくメンタル領域は、その最たるもの。ビジネスマンが仕事のパフォーマンスをいかに上げていくか、といったことにも通じる知見が必ず得られると思います。
そして今後、我々のデータを活用して各クラブが活動の幅を広げ、地域社会のウェルビーイングに貢献していく可能性も生まれる。『社会貢献』はBリーグのミッションのひとつです。一人でも多くの人が健康的な生活を送る。Bリーグがそのきっかけになれたら、これほどうれしいことはありません」
今回のレポートで示されたデータは、バスケットボールという競技のトップリーグが最高レベルの専門家とチームを組んで導き出したもの。今後もSCS推進チームが主体となってデータを蓄積し続け、そこから得られた知見をレポートとして発信していく。それにより今後、さらに多様な発見が生まれていくだろう。BリーグそしてSCS推進チームの今後の活動に、大いに期待したい。
■吉岡 淳平 / B.LEAGUE SCS推進チーム アスレティックトレーナー、三菱電機コアラーズ パフォーマンスディレクター
1977年生まれ、埼玉県出身。青山学院大学卒。青山学院大学男子バスケットボール部、バスケットボールユニバーシアード男子日本代表チーム、日本航空女子バスケットボール部、サントリーラグビー部を経て、2009年に東芝バスケットボール部(現川崎ブレイブサンダース)アスレティックトレーナーに就任。2023-24シーズンまでの14年間にわたり、メディカル、栄養、ストレングス、リカバリーにわたるコンディショニング全般を統括し、各コンディショニングスタッフの方針をひとつにまとめ上げ、選手が最大のパフォーマンスを発揮できるようサポートしてきた。2024年7月、三菱電機コアラーズ パフォーマンスディレクターに就任。
■数野 真吾 / 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ バスケットボールオペレーショングループ
1984年生まれ、山梨県出身。当時JBL所属のレラカムイ北海道で2007-08シーズンにマネージャーとして従事。その後体育器具メーカーの営業、アリーナ施設の管理運営の業務を経て、2015年に公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)へ。競技運営グループにて選手の契約登録業務や興行運営管理等を行い、コロナ禍においてはリーグ全体のコロナ対策を担当した。現在は2023年7月発足のSCS推進チームの事務局を担当している。
(TORCH編集部)
https://torch-sports.jp/
(前田 成彦 / Naruhiko Maeda)