選手のプレーを劇的に変えた“2分半の声かけ” 積極性を生む「褒めまくる」言葉の力
東京国際大学出身でドイツに渡った上船利徳は、故障のため現役を退くと、即座に「指導者として日本サッカーを変えていく」目標を定めた。
【“型破りサッカー人”が挑む指導法|第3回】楽しい瞬間を思い描いて変わる選手のメンタルと動き
東京国際大学出身でドイツに渡った上船利徳は、故障のため現役を退くと、即座に「指導者として日本サッカーを変えていく」目標を定めた。
最近では友人が監督を務める鹿児島の中学サッカー部を訪れ、ベンチに入って視察した。前半は防戦一方。立て続けに4失点し、チャンスも作れない状況を見て、上船は友人に提案した。
「ハーフタイムに話していい? 俺、変えられるから」
屈辱的な前半を終え、悄然として戻ってきた選手たちに上船が声をかけ、後半はテクニカルエリアに立った。そしてわずか2分半のミーティングを経て、チームは一変した。後半のスコアは2-1、他にも5回ほど決定的なチャンスを演出したという。
「両チームともに後半も同じメンバーで臨みました。どちらの当事者もびっくりしていました」
上船は、そう言って秘策を明かした。
「2分半で上手くなることはありません。でも(選手自身が)自分が一番楽しい瞬間を描くことで、一気にメンタルが変わります」
最も象徴的なのが、あまり調子が良くないFWがゴールを決めた途端に動きが変わる現象だ。上船は、ハーフタイムに個々の選手たちに理想のプレーと目標を尋ねた。
「たくさん良いパスをつなぎたい。良いクロスを上げたい。インターセプトをしたい。素晴らしいセーブをしたい。球際で負けない……。全てのポジションの選手に目標があります。ゴールを決めた選手は、その瞬間に全てのチームメートから祝福され、自分のプレーを高く評価してもらえる。気持ちが高揚し、自然と積極的で自信に満ちたプレーに変わりますよね。一方でハーフタイムに掲げた個々の目標は、それぞれの選手たちにとってのゴールです。そのプレーが上手くいった瞬間を見逃さずに、僕は全て褒めまくりました」
楽しく積極的な雰囲気がチーム全体に伝わり、見違えるパフォーマンスが引き出された。