未だ「気合、根性」の指導現場に一石 山本由伸も輩出した古豪OB、動作解析アプリに込めた夢の一歩 子供は「つまらないと上手くならない」
山本由伸を輩出した都城高での日々「理想の選手生活ではなかった」
スポーツのデータ領域に携わるきっかけは、高校時代にまでさかのぼる。ドジャース・山本由伸らを輩出し、夏8回、春1回の甲子園出場を誇る宮崎・都城高校の出身だが、振り返ると苦しい日々だった。
まだ「気合、根性」に重きが置かれていた1999年に入学。質より量の練習が祟り、肘を故障して満足にプレーできなかった。「2番・遊撃」だった最後の夏は2回戦敗退。涙も出ず、呆然とする中で試合終了のサイレンを聞いた。
「理想の選手生活ではなかったですね。だからこそ当時からテクノロジーに関心があって、どうやったら怪我が治るか、効率よく練習できるかばかり考えていました」
スマートフォンやYouTubeなんてない時代。できることと言えば本を読み漁り、テレビで流れるプロ野球選手の映像をお手本にするくらい。第一経済大(現・日本経済大)でも準硬式野球部でプレーしたが、とにかく闇雲だった。
卒業後は海外で働くチャンスに惹かれて岡三証券に入社。ただ、2年満たずで証券マンは辞めた。ベトナムで起業のチャンスを掴み、その後も中国、インドネシアなどで事業を展開。AI領域にも進出し、効率化されていく世界に触れてきた。
対照的に、高校球界や少年サッカーなどの現場でデータは全く活用されておらず、衝撃を受けることもしばしば。「今でも気合、根性。特に田舎ですけど、凄くもったいないなと思った」。ちょうど次の事業展開に頭を悩ませていた2020年。母校の実情なども目の当たりにし、「データを可視化、計測できて、分析しながら練習に活かせるものを作りたい」との考えからNineEdgeの設立に至った。