大坂なおみを変えた指導哲学 なぜ、バイン氏は世界1149位から名コーチになれたのか
選手には最大限のサポートを提供し、結果を求める
20歳の頃、ルーマニアの女子選手のコーチとなり、トーナメントに参加。世界ランク200位前後の選手だったというが、少しずつ成長する姿にやり甲斐を感じていた。そして、22歳の時にセリーナ・ウィリアムズ(米国)と出会い、ヒッティングパートナーとなった。世界トップの選手と8年を過ごし、その活躍を支えたわけだが、サポート体制は「ヒッティングパートナー」という肩書きに収まるものではない。
「僕は単なるヒッティングパートナー、単なるコーチというだけではなく、選手がコートで全力を出せるように、できる限りのサポートをしたいと考えている。例えば、少し離れた場所に用事を済ませに行くのだったら、選手が少しでも長い時間リラックスできるように車の運転を買って出る。ホテルのクロークではないけれど、クリーニングを受け取りに行くことだって厭わないし、シェフではないけれど料理を作ることもある。選手が過ごしやすい環境を作れるのであれば、僕は何でも手伝うよ。
この仕事は24時間365日、休みなしの仕事だと思っているんだ。数時間一緒にテニスをして、じゃあまた明日、というだけではない。選手と寄り添い、最大限のサポートをしてきたから、いろいろな選手と結果を残せたんだと思う。もちろん、サポートする代わりに、選手にはしっかり結果を出すことを求めるから。これが僕のやり方なんだ」
ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)も指導し、世界のトップに乞われる存在となったバイン氏。そして、大坂のポテンシャルを引き出すことに成功した指導哲学は、テニスに限らず、様々な状況で参考にすることができそうだ。
(インタビュー第3回に続く)
(佐藤 直子 / Naoko Sato)