「サッカーを深く考えてこなかった」と痛感 “選手主体”託された元主将の濃密な1年
堀越高校サッカー部監督の佐藤実(まこと)は、指導者が主導するトップダウンから、選手主体のボトムアップ方式への転換の機会を探っていた。そして低調な内容の試合の後に、怒りをぶつけるように敢えて選手たちに主導権を投げつけた。
【短期連載第2回】堀越高校サッカー部「ボトムアップ方式」への挑戦――“初代”キャプテンの戸惑いと成長
(第1回はこちら)
堀越高校サッカー部監督の佐藤実(まこと)は、指導者が主導するトップダウンから、選手主体のボトムアップ方式への転換の機会を探っていた。そして低調な内容の試合の後に、怒りをぶつけるように敢えて選手たちに主導権を投げつけた。
「もうオレは面倒を見ないからな」
その日から部活のリーダーは、監督からキャプテンに代わった。当時主将の戸田裕仁は、まず「僕がそんなことをしていいのかな?」と大きな戸惑いを覚えた。
「僕らの学年は個性の強いタイプが多かったですからね。あれをやろう、これをやろう、と侃々諤々(かんかんがくがく)で、では間を取ってこうしようと、まとめていくのが僕でした。チームメイトとは、チームを良くするために日々話し合いを重ねました。僕が頼りないから、みんなが助けてくれたんだと思います。最初は監督に教わってきたことを中心にやろうとしましたが、なかなかまとまらない。自分がサッカーを深く考えてこなかったことを痛感しました」
しかし選手主導へと舵を切り、チームは少しずつ進化していった。部員たちが舵を握ったことで、個々が真剣にサッカー、チーム、仲間について考えるようになった。
戸田が述懐する。
「5月初旬には関東大会予選があり、監督が与えてくれたものに、自分たちで話し合ったものを肉付けして、国学院久我山に善戦することができました。選手権の約1カ月前には、T2リーグ最終戦があり、優勝するには相当無茶な大量得点が必要でした。結局優勝には届かなかったもののノルマは達成できた。そして選手権予選は帝京と1-1からPK負け。前年は1-4で負けていた相手でした。つまりボトムアップに切り替えてからの1年間で3点差を埋めることができた。本当に濃い1年でした」