「先生、男子と稽古やらせて下さい」 渡名喜風南、恩師が語る高校時代のブレない秘話
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。柔道では、活躍した選手の恩師の育成法にクローズアップした短期連載を掲載。第1回は女子48キロ級、渡名喜風南(パーク24)だ。決勝は世界ランキング1位のディストリア・クラスニチ(コソボ)に敗れたものの、初出場で銀メダルを獲得。修徳高校柔道部で渡名喜を育てた大森淳司監督が秘話を明かした。(文=THE ANSWER編集部)
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#13
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。柔道では、活躍した選手の恩師の育成法にクローズアップした短期連載を掲載。第1回は女子48キロ級、渡名喜風南(パーク24)だ。決勝は世界ランキング1位のディストリア・クラスニチ(コソボ)に敗れたものの、初出場で銀メダルを獲得。修徳高校柔道部で渡名喜を育てた大森淳司監督が秘話を明かした。(文=THE ANSWER編集部)
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大森監督は、渡名喜について「自分の芯を持っている。人に流されない。そこが彼女の強さですよね。本当にアスリートとしてかっこいいと思える子だった」と明かす。
高校入学後、元世界選手権代表の北田佳世さんの指導を受け、メキメキと実力を伸ばした。「北田の先生の稽古は、非常に厳しくて、音をあげる生徒もいた。渡名喜は全然、普通にぶれることなくやっていた」。当時から精神力の強さは折り紙つき。ひたむきに練習に打ち込む姿勢は、鮮烈な印象があった。
その後、高校2年のときに指導者が交代すると、渡名喜は大森監督に相談した。
強豪の修徳高柔道部は、練習場を男女別に持つ。女子は女子の稽古場で練習していたが、ここで渡名喜は行動を起こす。
「新たな指導者になって、稽古量として自分の中で納得できない部分があったのかもしれない。私のところに来て、『先生、男子と稽古やらせてください』と言ったんです」
148センチと小柄で48キロ級の渡名喜は、体格でははるかに上回る男子の中に飛び込んだ。
筋力やパワーでは男子に分があるのは当然。しかし、渡名喜はそこでも男子と遜色ないハードな稽古をこなした。
「女子1人だと、いろいろ気持ちが折れたり、なかなか通用しないなというところがあるんですけど、彼女の場合は男子の中に入っても違和感ないくらいの稽古をする子だったですね。大きい相手とやっても引かない。自分のスタイルを崩さない。体重が倍以上ある子とやっても引かない。男子も遠慮しないし、彼女も遠慮しない」
投げられても、投げられても、くらいついていく。気持ちで負けることは決してないタフな心。男子との稽古でもまれ、渡名喜はさらに実力を伸ばした。
大学進学時に、再び困難に直面する。帝京大への進学を決めた矢先、誘ってくれた監督が突如、交代した。