「11人全員を抜け」 元海外組が痛感したスペイン育成現場の“ドリブル優先主義”
「デポルのスカウトに『どんな子をスカウトするの?』と聞いたら、返答は一言『ドリブルができる子だ』でした」――安永聡太郎(元横浜FM、リェイダほか)
スペインのスカウト哲学は「一人で全員を抜けるならそれが勝つための最良の手段」
「デポルのスカウトに『どんな子をスカウトするの?』と聞いたら、返答は一言『ドリブルができる子だ』でした」――安永聡太郎(元横浜FM、リェイダほか)
かつてスペインでプレーをした安永聡太郎氏は、引退後に知り合いのデポルティボのスカウトと食事をして、育成談義に花が咲いた。
「どんな子をスカウトして来るの?」
「ドリブルができる子だ」
スカウトは続けた。
「子供には、まず11人全員を抜け、と指示する。一人で全員を抜けるなら、それが勝つための最良の手段だ。だが年齢を重ねれば、11人が10人……3人と、だんだん抜ける相手が減っていく。そして最後に1対1でも苦しくなったら、パスを教えるんだ。そこで子供たちは、パスの有効性を理解する。パスから入ると、絶対にパスコースを探す。しかしパスを選択するにしても、行ける時は自分で行くんだという前提がなくてはいけない」
安永氏は、帰国して河川敷を走りながら、子供たちの練習風景を目にする機会が増えた。スペインと日本、あまりに発想がかけ離れていて愕然とした。
「日本では小学生をメチャメチャ走らせている。必要な走りならいいんです。でも無闇に走り回るのは意味がない。結局日本では、個で勝てないから組織で、という発想でやっているけれど、それではいつまで経っても個が育たない」