「好き」を「嫌い」にしないため 日本人指導者が北米で体感した根性論じゃない指導
「いい部分はちゃんと取っておいて、足りない部分は伸ばしていこう」
当時の日本スポーツ界は、根性論が全盛。ミスを怒られ、人前で怒鳴られることが当たり前だった世界から、太平洋を越えた先には、まったく違う世界が待っていた。「単純に上手いとか下手とかではなく、自分の長所をどう生かすか。すごく勇気に繋がりました」と振り返る。
「試合でいい結果が出なかったり、自分のプレーに納得がいかなかったりすることもある。でも、自分の長所を伝えてもらうことで、いい部分はちゃんと取っておいて、足りない部分は伸ばしていこうって考えられるようになりました。もちろん、怒られたり注意されたりすることもありますけど、その理由はちゃんと説明してくれましたね」
コクド入社後の2002年にも1シーズン、米イーストコーストホッケーリーグのシャーロット・チェッカーズに所属。ここではさらに、チャンスは自分で掴みにいくものだと実感することになる。
「北米では、NHLを頂点に育成システムが出来上がっています。いい選手はどんどん上のレベルに行けるし、足りない選手は下で経験を積んで、成長して戻ってこいよ、という感じ。日本のように『何とかしてこの選手を引き上げよう』と必死に育成するんじゃなくて、選手の自主性に任せる部分が大きいんです。もちろん、何が足りないのかは伝えてくれますけど、やるかやらないかは選手次第という、ある意味、すごくドライな環境。自分でチャンスを取りにいかないと成長に繋がらない、自然とハングリーになる環境がありました」
こういった経験は、コクド(後のSEIBUプリンスラビッツ)、日光アイスバックス、日本代表でキャプテンとしてチームをまとめる時はもちろん、指導者となった今、選手個々の成長を促す時、鈴木氏が実践するコーチングの「土台」となっている。
「いい点を見つけてあげよう、というのは心掛けています。それは小学生を教える時でも、大学生を教える時でも変わりませんね。自分もいい年齢まで現役をやらせていただきましたけど、やっぱりどの年齢でも褒められたら嬉しいですから(笑)。それは共通です。アカデミーの子どもと大学生では、言葉遣いは変えたりしますけど、基本的にいいところを褒めるのは変わりません」
子どもたちがいつまでも「楽しい」という気持ちを持ち続けるために、そして「好き」を「嫌い」に変えないために、「褒めながら伸ばす」指導を実践していく。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)