子供はいつからサッカーに夢中になるのか 4年に一度のW杯が与える影響力
“W杯ごっこ”から始まった長男独自のサッカーの楽しみ方
そういえばうちの長男もそうだった。きっかけはブラジル・ワールドカップ。ドイツ代表の活躍をテレビで一緒に追いかけていた。優勝カップを掲げる代表をキラキラした目で見ていた。
翌日休みだった僕に長男が尋ねてきた。
「パパ、ワールドカップごっこをしようよ!」
サッカーをすると思って僕は一緒に外に出た。ユニフォーム姿でボールを持って降りた長男は早速、そこで蹴り始めるのではなく、自転車置き場の入り口にボールをセットした。うちの住まいは半地下に自転車置き場があるのだが、僕らはそこから選手入場を真似た。スマホに入っているFIFAアンセムを流し、長男と次男と僕はそれぞれの代表チームとして階段を上がった。審判役の次男がボールを手に取ると、その先で整列。国歌斉唱の時間だ。3人で円陣をして、さあキックオフ!
と思ったら、「面白いね。もう一回やろう!」と入場行進を繰り返す。何度も、何度も。「今度は僕、イタリア代表ね。パパが審判」。結局、ほとんどボールを蹴らないで「ワールドカップごっこ」は終わった。とてもとても楽しかった。
今では週2回の練習と週末の試合を心から楽しみ、週末のブンデスリーガダイジェストを欠かさず見て、フリーTVで行われるチャンピオンズリーグを観戦しながら、戦術やフォーメーションにも言及する。選手データに関しては、もう僕よりも詳しい。
入り口は人それぞれ。楽しみ方も人それぞれ。きっかけはいろんなところに転がっているし、いつまでにとか、こういうやり方でという規則があるわけでもない。ひょっとしたら次男もそうなるかもしれないし、また違うサッカーの楽しみ方を見つけるかもしれない。
自然と触れ合いながら、自分なりのサッカー感を作り上げてほしいと願っている。
◇中野 吉之伴(なかの・きちのすけ)
1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
(中野 吉之伴 / Kichinosuke Nakano)