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監督が必死になり、奪った選手の夢中 近江サッカー部監督×楽天大学学長のチーム育成論

先輩と後輩の垣根を越えて生まれたリスペクトが良い雰囲気を生んだ

仲山「チーム内のコミュニケーションは、選手同士が意見を言い合うカタチだったのでしょうか?」

前田「僕が就任する時に入ってきた子たちが強化部1期生になります。元々いた選手(強化部1期生より上の学年)は、7人いたのですが最終的には4人ほどしか残りませんでした。でも、1期生が60人近くいるなかで、残っている4人が多様性を発揮してくれたと思います。彼らも上(先輩)がまったくいない状況では見えなかったこともあったと思いますが、本当によくやってくれました」

仲山「4人の先輩はどんな立ち位置でしたか?」

前田「ハッキリ言って1期生の子たちのほうが実力も人数も上でした。それでも4人とも人数が少ないなかでもずっと頑張っていた子たちなので、1期生が入ってくることでどうするかを見ていました。結果的に、4人の先輩たちは後輩たちとうまくやってくれました。昔の高校サッカーだと上下関係は絶対的なものでしたが、彼らは先輩ぶらないどころか、先輩と後輩の垣根を壊してコミュニケーションを取ってくれたと思います。先輩と1期生が作りだしてくれた雰囲気は今も根付いていて、先輩だから後輩だからというものはありません」

仲山「前田さんはその光景を見ながら、どういった関わり方を?」

前田「僕は残ってくれた4人に対して最大限のリスペクトをしていました。1期生の子たちには『お前らはサッカーがしたくて来ているけれど、彼らはチームが新しくなるなかでも残ってくれた選手だし、先輩として敬うように』とは常々伝えていました。1人はコーチとしてチームに残ってくれています。ずっと一緒に頑張ってくれた子たちです」

仲山「意図的に雰囲気を作ったわけではなかったのですね」

前田「そうですね。自然とそういう雰囲気になってくれましたね」

仲山「新入生が入ってくるとさまざまなことが起こると思いますが、その後はどうなりましたか?」

前田「インターハイが終わると、4人ともポジションを取られて試合に出られなくなります。そこで良かったことは、後輩が先輩を排除しようとしなかったことです。4人の先輩たちもいろいろな思いはあったと思います。それでも僕の前では『やり切れるところまでやり切ります』と言ってくれていました。どちらかというと、1期生よりも4人と話すようにはしていましたね。A・B・Cと3つのカテゴリーがあるなかで、彼らはCチームにいたのですが、よくちょっかいをかけにいっていました」

――どういう意図でそのようなスタンスをとったのでしょうか?

前田「選手は指導者から声をかけられるとうれしく感じることを知っていたからです。サッカーと関係のない冗談であったとしても、ひと声かけられることは僕が選手のときにうれしく感じたことでした。特に試合に出られないときこそ、下の選手や指導者の顔色をうかがってしまうものだと思うのですが、そういうときに気にかけてもらえると純粋にうれしかったです。4人のことが好きだったからこその行動だったと思います。彼らカッコいいじゃないですか。辞めることのほうが簡単なのに、あえて難しいほうを選択して、挑戦しようとする姿は素晴らしいものだったと思います」

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