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今、日本スポーツ界が抱える課題「アスリートの価値に比例する『周辺の仕事』の価値」

アスレティックトレーナーとしてJリーグの複数クラブで活動した後、なでしこジャパンをサポートするなど、日本サッカー界に長年にわたり多大な貢献をしてきた広瀬統一氏。現在の日本のスポーツの課題、スポーツ界・アスリートの価値を高めるための施策についてお話を伺った。前編と後編に渡ってお届けする。

インタビューに応じたアスレティックトレーナーの広瀬統一氏【写真:小野瀬健二】
インタビューに応じたアスレティックトレーナーの広瀬統一氏【写真:小野瀬健二】

アスレティックトレーナー・広瀬統一氏インタビュー前編

 アスレティックトレーナーとしてJリーグの複数クラブで活動した後、なでしこジャパンをサポートするなど、日本サッカー界に長年にわたり多大な貢献をしてきた広瀬統一氏。現在の日本のスポーツの課題、スポーツ界・アスリートの価値を高めるための施策についてお話を伺った。前編と後編に渡ってお届けする。

 ◇ ◇ ◇

――アスレティックトレーナーを志したきっかけ、経緯を教えてください。

「元々はサッカーの指導者になりたいと思っていたんです。大学2年生の時に怪我をしてしまって、手術をしてリハビリに取り組んでいました。その時にサポートしてくれたのが、理学療法士でありアスレティックトレーナーだったんです。とても素晴らしい仕事だなと感じました。アスレティックトレーナーになりたいというよりは、トレーニングに関わりたいという思いを持ちましたね。

 なでしこジャパンでは、フィットネスの向上やコンディショニングがメインの業務です。資格でいうとCSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)に近いことをしています。あとは怪我をした選手が復帰するためのサポートですね。ヴェルディ時代は最初はそちらがメインの業務でしたが、そもそも怪我を防げればいいのではないかと考えてトレーニングを中心に行うようになりました。

――学生時代はどのようなことを学ばれたんですか?

「早稲田大学人間科学部スポーツ科学科の時に運動生理学を専攻していたので、その時に学んだ知識がすごく生きました。スポーツ医学やトレーニング・リハビリに関しては体系的に学べるところがなかったので、卒業後に独学で学びました。

 卒業後は、東京ヴェルディでアスレティックトレーナーとして働きながら週に1回、大学に通って勉強を続けていました。大学院にも行って勉強しましたね。

 1997年に大学を卒業して東京ヴェルディでインターンとして2年間働きました。本契約できたのは3年目です。2006年にヴェルディを退団して、4月からは早稲田大学の教員をしながら、2007年に名古屋グランパスに入団しました。

 その頃にJFAアカデミーの女子チームからオファーをいただいたので、2008年からグランパス、JFAアカデミー、なでしこジャパン、大学教員を平行してやっていましたね。2009年はグランパスを辞めて京都サンガに行きましたが、残りは平行して取り組んでいました」

――日本のスポーツの課題は何でしょうか?

「まずはアスリートの価値を高めなくてはいけません。日本においてアスリートの価値は、定常的に高いわけではないと思うのです。オリンピック前は高いけど、終わったらメダルを取らない限り価値が下がってしまうように見える。アスリートに対するリスペクトや付加価値がまだ足りないと思います。

 お金の話で例えると、アスリートが例えば1000万円しかもらえないのであればコーチは間違いなくそれ以下になってしまう。アスリートをサポートするアスレティックトレーナーはさらに下がりますよね。そもそもアスリートの価値が上がらないと、その周辺の仕事の価値も上がらないんです。稼げないとパーソナルトレーナーも付けられない。結果的に、スポーツ界のサポートスタッフってボランティアが多いですよね。

 日本はボランティア精神が弱いと思うんですが、スポーツにおいては強いんです。育成年代もボランティアのコーチやトレーナーが多い。でも、それでは100%責任を持って取り組める状況ではないですよね。

 ボランティアの比率が高いことが、良いのか悪いのかは分かりません。ボランティアだからこそ続けられる人もいると思いますので、その結論を私には出せません。ですが、サポートするスタッフが100%全力を注ぎ込めない理由のひとつはそこにあると思っています。ボランティアベースでより注力できる環境を作るのか、お金を生み出して仕事として向き合える人を増やすのか。あるいは他の方法もあるかもしれません」

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