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コーチの指示は“絶対ではない” 日英の育成現場で痛感、子供の「主張力」の違い

大学在学中に英国の子供たちを指導した塚本修太さん【写真:編集部】
大学在学中に英国の子供たちを指導した塚本修太さん【写真:編集部】

日本での育成指導はあまりに楽 「逆にコーチが勘違いする恐れがある」

 さらに子供たちには、下記の「5つの“C”を育む」指導が推奨されている。

●Commitment(コミットメント)=貢献、責任(目標に対して努力を惜しまない)
●Communication(コミュニケーション)=意見を伝え合う
●Cocentration(コンセントレーション)=集中
●Confidence(コンフィデンス)=自信
●Control(コントロール)=感情の抑制

 現場では、技術より人としてどうあるべきかに焦点を絞った指導が多く、サッカー選手というより人間を育てる指針を徹底していた。

「最初はそんなの当たり前だと思いました。でも確かに人間として成熟するかどうかは、トップへ行けるかどうかの分かれ道になっている。プレミアリーグでも、どんどん若い選手たちが結果を出していますが、精神的に成熟していなければそれは難しい」

 育成の指導者たちは、誰もが「人としてきちんとしていなければ、サッカーでも成功はできない」と口を揃えた。

 英国でそういう指導体験を経て、日本で指導をしてみると、あまりに楽だと感じる。

「何かを指示すれば、みんなすぐに一生懸命に取り組む。それはすごく嬉しいことなんですが、逆にコーチがチームのすべてを掌握していると勘違いする恐れがある」

 反面日本での実体験から、サッカーを嫌いになって辞めていく子が多いことを危惧する。

「みんな最初は好きで始める。でもだんだん練習に行きたくない子が増えてきて、始まる前から暗い顔をしているケースもある。その結果辞めると『根性がない』って、それは違うと思う」

 楽しいから来る――。塚本は、そんな育成現場を増やしていきたいと願っている。

(第3回へ続く)

[プロフィール]
塚本修太(つかもと・しゅうた)

1997年6月21日生まれ、茨城県出身。幼少期からサッカーを始め、小、中学校は地元のチームに所属したが高校は名門・前橋育英高校サッカー部に進学。度重なる怪我で高校2年の夏に中退したのち、サッカー指導者を目指すためにイギリスのソレント大学のフットボール学部に進学。サッカーを学問として勉強するなか、FAの心理学ライセンスはレベル5まであるなかで日本人で初めてレベル4まで取得。その他にもスカウト、分析、フィジカル、コーチングの資格を取得。コーチをしていた育成年代のチームは2年連続その地域での年間優秀チームに。昨年は小林祐希(ワースラント=ベフェレン)の個人分析官を担当した。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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