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ドイツで気鋭の青年監督が現れる理由 年齢も実績も関係なし…日本の指導者養成との違い

ドイツは現役時代の実績だけでなく、プロの指導者になる可能性を優先

 実際、鈴木自身がビーレフェルトのヘッドコーチを務めたのも35歳の時だったが、選手たちは彼の指導力を認めてくれていた。

「もともとドイツには年功序列の発想がない。それは言葉の文化の影響も大きいかもしれません。例えば私がボルシア・メンヘングラードバッハに帯同していた頃に、スーパースターだったギュンター・ネッツァーやユップ・ハインケスに対しても、ユースから昇格したばかりの18歳の選手が友だちのように接していました。ただしドイツ人にもキャリアの蓄積が大切だという意識はあり、ナーゲルスマンがレアル・マドリードからオファーを受けた時も、まだ私には早過ぎる、と話していました」

 いずれにしてもドイツのS級コースは、現役時代の実績だけではなく、プロの指導者になる可能性のある受講者を優先させている。

「今年はW杯で歴代最多得点記録を持つミロスラフ・クローゼが受講します。一方、日本では多くの学校の先生が取得していますが、これではなんのためのS級なのか分からない。逆にJFAは高校、大学、社会人の指導はA級でも良いなどと規定し、発信していくべきです」

 確かに日本でもクラマーの進言により、指導者養成コースはできた。だがテデスコやナーゲルスマンが生まれてくる土壌があるとは思えない。歴史的にもドイツは日本の師に当たるわけだが、まだまだ見習い、修正すべき点は少なくない。(文中敬称略)

[プロフィール]
鈴木良平(すずき・りょうへい)

1949年生まれ。東海大学を卒業後、73年に西ドイツ(当時)のボルシアMGへ留学。名将ヘネス・バイスバイラーの下で学びながら、ドイツサッカー連盟S級ライセンスを取得した。84-85シーズンにはブンデスリーガ1部のビーレフェルトのヘッドコーチ兼ユース監督を務めた。その後は日本女子代表初の専任監督に就任するなど女子サッカーの発展にも尽力。ブンデスリーガなどのテレビ解説者としても活躍する。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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