コロナ禍で子どもたちの運動不足が深刻に ドイツ在住の日本人コーチが見た“環境差”
物理的な距離を取る以上、心理的な距離で寄り添う取り組みを…
そこへきて、今回の新型コロナウイルスである。種目にかかわらずすべてのスポーツクラブが活動を休止し、友だちと遊んだり、ボールを蹴ったりすることができなくなってしまった今、子どもたちはいったいどうしたらいいんだろう。
家で退屈にしている、あるいは家にいるのがつらいという子どもでも、本来なら家から出て学校や地域コミュニティに顔を出せば、そこで子どもと子どものつながりが生まれ、様々な活動を楽しむことができていた。だが、今やそのほとんどが遮断されている。
学校からは、メールで保護者宛に家でもできる手軽な運動例があれこれ送られてくるし、ソーシャルメディアにも似たような情報は溢れている。だが、子どもたちにそれを伝える人がいなければ、そばにいて一緒に楽しめる人がいなければ、いったいそれがどれだけの役に立つのだろうか。
自粛は大切だ。でもすべてを、それぞれの家庭任せにしていたら追いつかない。スポーツクラブは普段の活動ができないからどうしようという前に、所属している子どもたちの様子を確認できるようなコミュニケーション体制を整えるべきだし、学校にしてもオンライン授業を導入しようにも、すべての子どもたちがそうした状況下で密なコミュニケーションが取れるのかを確認すべきだろう。物理的な距離を取らなければならないのだから、僕らは心理的な距離で寄り添い合わなければならない。
まだ始まったばかりなのだ。僕たちはおそらく、これからまだまだ普段意識しなかったような様々な社会の綻びに直面することになると思う。今は毎日笑顔で過ごしてくれている子どもたちも、友だちと会えず、遠くに出かけることもできず、大好きなサッカーもできない日々が何週間も続けば、いずれ気が滅入る日もあるに違いない。
僕も妻もその時に子どものそばにいて、そっと肩に手を置ける存在でいたい。そしてすべての子どもたちの肩に、同じように寄り添ってくれる誰かの手があるようにと心から願っている。
(中野 吉之伴 / Kichinosuke Nakano)