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「いろいろ言われたら下手になっちゃう」 練習後にハッとさせられた我が子の言葉

我が子は特別だからと、何をしてもいいわけではない

 見ていた僕は消化不良に終わったけど、本人はどうだったんだろう。帰りのバスで聞いてみたら、「Fユースに上がったら、みんな速いし、僕がもっと頑張って上手くならないとボールに触れない」と話してくれた。「楽しかった?」と聞くと、「楽しかったよ」と答える。さらに「楽しそうに見えなかったけど?」と聞くと、次男は困った顔をしてしまった。

 それはそうだ。そんなことを言われても困るしかない。悪いことを言った。

「練習で気になったことがあっても、パパは黙ってた方がいいかな?」

 そう聞くと次男は僕の目を見て、「うん。その方がいい。だって、いろいろ言われたら下手になっちゃうもの。僕は大丈夫だから」と答えてくれた。そうだ、そうだよね。その通りだ。せっかく楽しくサッカーをしに来ているのに、外からいろいろ言われたらやりたいこともできない。

 よくぞ言ってくれた。僕は次男に謝った。

 子育て論は世間に山ほどあるが、我が子に対する感情はどうしたって特別。頭で分かっていても、なかなかできないからみんな苦労する。でも特別な感情だからと、何をしてもいいわけではない。こちらがミスをしたら心から謝る。それは子供に対しても、いや子供に対してだからこそ大事なことだ。

 次回は少し離れたところから、彼の頑張りを追いかけてみよう。良いプレーだったかどうかではなく、やろうとしていることを素直に認めて、褒めてみよう。

【了】

中野吉之伴●文 text by Kichinosuke Nakano

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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