遠征手続きから部費の口座管理まで 慶應高ヨット部が重んじる生徒の自主性
チームの主戦力・菅澤の夢は…「オリンピックに出場したい」
インターハイ出場を決めた大きな要因となったのは、小学3年生の頃からヨットと親しんでいる菅澤の存在だ。小林とのコンビでは、ヨットの舵を握るスキッパー役。「ヨットでオリンピックに出場したい」という夢を叶えるために、慶應高への進学を決めたという。「海の開けた場所で、自分だけでヨットに乗りながら風に吹かれるのが、本当に気持ちいいんです」。自宅近くの江ノ島にあるヨットクラブに所属し、中学までは1人乗りのヨットを操っていたが、高校に入ってから2人乗りへシフト。今は2人だからこそ味わえる楽しさに心を奪われている。
「僕はずっとヨットをやってきたけど、相方(小林)は高校から始めたので、自分の思っていることと相方の思っていることが少し違うことがあるんです。そういう時に考えを共有したり会話する楽しさがある。技術面でも、自分の思う通りに動かすだけだと、息が合わなくて失敗が増えてしまうので、丁寧に合わせていくことが大事になります。高校に入ってから、他人のことを考えるようになったり、意見を聞くようになって、自分でもだいぶ変わったなって思いますね」
中学まではバスケットボールをプレーしていたという小林は、高校からヨットを始めた。初めてヨットに乗った時、「自然の力でここまでできるんだって感動しました」。“熟練”の菅澤とのコンビは抜群で、出場するインターハイでは「やっぱり優勝を目指していきたいです」と力強く言い切る。
加藤監督は「せっかく出るので、優勝を目指してほしいと思っています。ただ、フェアプレーの精神は持っていてほしいですね」と話す。そして何よりも感じてほしいのは、周囲のサポートがあって叶ったインターハイ出場という点だ。
「試合に出られるメンバーは一部ですけど、セールを上げたり、ヨットを整備したり、いろいろな形のサポートがある。ヨット部全員が何か1つの目標に向かって進んでいる、そういうチームの一体感が深まるといいですね」
巴部長も続ける。
「この部活があるのは、自分だけの力じゃなくて、保護者やコーチ、OBの方々など周りのサポートがあるから。そのサポートがあるからヨットを楽しめているんだっていう感謝の気持ちを忘れずにいてもらえるとうれしいですね」
感謝の気持ちを胸に、部員全員の思いを帆にいっぱい受けて、菅澤、小林、海老澤、伊藤の4人が、和歌山の大海原に滑り出す。
◇インターハイのヨットは8月12日から8月16日まで熱戦が繰り広げられる。今大会は全国高体連公式インターハイ応援サイト「インハイTV」を展開。インターハイ全30競技の熱戦を無料で配信中。また、映像は試合終了後でもさかのぼって視聴でき、熱戦を振り返ることができる。
(THE ANSWER編集部)