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遠征手続きから部費の口座管理まで 慶應高ヨット部が重んじる生徒の自主性

かつては部員5、6人の時代も… 加藤監督「インハイ常連校になったのが信じられない」

今では部員総勢43人の塾高ヨット部も、その歴史は決して平坦なものではなかった【写真:荒川祐史】
今では部員総勢43人の塾高ヨット部も、その歴史は決して平坦なものではなかった【写真:荒川祐史】

 1948年創部という伝統を誇る塾高ヨット部は、2005年以降、ほぼ毎年のようにインターハイに出場する強豪校だ。現在、部員は3年生9人、2年生25人、1年生9人の合計43人。他校には珍しい部活動かつ爽やかなイメージのマリンスポーツとあって、人気が高いと思いきや、その歴史は決して平坦なものではなかった。巴部長が顧問に就任した1990年代後半には「部員がほとんどいなくて、5、6人という時もありました」と振り返る。

「海上練習をする時は、大人のコーチが必ず付き添うようにしていますが、部員よりもコーチの数が多かったなんていう時代もありました。隔年でしか部員が入らずに、入部したての1年生が3か月後には主将になっているなんてことも(笑)。それが2000年代に入ってから、中学時代にヨットをしていた生徒が少しずつ入るようになって、部員の数が増えていきました。20年前は地区予選、関東大会を通過して、インターハイに出ることが目標だったんです」

 加藤監督も「以前は本当に弱かった。インターハイ常連校になったのが信じられないですね」と笑う。

 また、かつては大学生と同じ合宿所を使いながら海上練習をしていたが、高校生がより伸びやかに練習できるように練習場所を独立させるなど、部の存続を願うOBのサポートを受けながら環境整備を行った。現在に至るまで紆余曲折はあったが、どの時代も一貫してきたのは「生徒が自分たちで考えて自分たちで実行するという自主性」(加藤監督)だ。

「監督やコーチが声を上げてやった方が早いこともあると思うんですが、そこは敢えて我慢して、部の運営に関することは全て自分たちでやらせています。主将や副将がどんな練習をするか決めたり、チーム編成を決めたりするだけではなく、大会のエントリーや遠征の手続きは主務、部費や銀行口座の管理は財務という役職の幹部がやっています」(加藤監督)

 高校生ではあるが1人の人間として尊重するのが、塾高ヨット部流。「高校生にはできないだろう」と決めつけるのではなく、まずは何事も自分の力でやってみて、それぞれが秘める可能性に気付いてほしい。そして、せっかく巡り逢ったヨットというスポーツを全身で楽しんでほしい。塾高ヨット部をサポートする大人たちは、そんな想いを共有しているようだ。ヨットの魅力について、加藤監督はこう語る。

「自然を相手にしているというところで、自然の厳しさだったり、逆に自然の穏やかな優しさだったりと向き合える。これは他のスポーツでは味わえないものですよね。昔からヨット部には『自然に順い、自然を制す』という言葉があります。自然には逆らうのではなく、従いながら制していく。そこがたまらなく面白いと思いますね」

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