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「あの試合は忘れられない」文武両道の県立女子高バレー部に活を入れた「1点」の重み

選手主導で練習メニューや作戦を立案、合宿中は朝練ならぬ“朝勉”を実施

コート上での練習内容や試合の作戦立案など、選手主導で進めている【写真:編集部】
コート上での練習内容や試合の作戦立案など、選手主導で進めている【写真:編集部】

 最後までボールを追い続ける体力をアップさせるためにも、ここぞという場面でもう一押しできる強さを身に付けるためにも、まずは走り込みの強化を行ったという。時には、1周300メートルある校庭のトラックをダッシュで10本走ったり、1000メートルから休憩を挟みながら徐々に走る距離を短くし、最後は50メートル走で締めくくったり。石原監督が「生徒には本当に嫌なトレーニングだと思います(笑)」と話せば、選手たちは「キツイです…」と苦笑い。それでも走り続けるのは、自分自身に変化が見てとれるようになったからだ。最初の変化は、2018年1月に県新人大会で飾った優勝だった。

「新人大会で優勝して、ベスト8の壁を越えられたことが大きかったと思います。その年の県総体で準優勝し、インターハイ予選で準優勝。メンバーに恵まれた部分もありますが、先輩の姿を見ながら成長してくれたと思います」(石原監督)

 石原監督の赴任と同時に入学した丸山と森は、中学時代には群馬県選抜メンバーにもなったエリートだ。2人とも高女バレー部で活躍した姉の姿を追って入学。「部活と勉強を両立している姿に小さい頃から憧れていた」と入学した金子愛(3年)もあわせ、1年生の頃から試合に出場し続けている。その中で試合に勝つ喜びや負ける悔しさ、自分たちの長所、そして足りない部分など、様々な経験や学びを得た。

 選手が得た学びを最大限に生かしてほしい。社会に出た時に自分で考えられる人間になってほしい。そう願う石原監督は、コート上での練習内容や試合の作戦立案、試合中のタイムアウトを取るタイミングまで、選手主導で進めている。「私は本当にヒントを与える程度。選手が自分たちで話し合って、自分たちに何が足りないか、どんな練習が必要かを考えて練習しています」と石原監督。平日の練習時間は2時間ほどで、強豪私立に比べると部活に割ける時間は短い。大学進学を目指す生徒たちは、週末に出掛ける遠征のバスの中で教科書を広げ、合宿中は朝練ならぬ“朝勉”をするなど、部活でも勉強でも工夫を凝らしながら文武両道を目指す。

 重要な大会を終えた後やシーズンの区切りを迎えた時には、学年は関係なくポジションごとに集まって、現時点での課題、次の目標についてディスカッションの場を設けているという。目標を設定するだけではなく、達成するためには技術面・戦術面・生活面・学習面などでどんなアプローチを取るべきか、B4版の紙に書き記し、次のディスカッション時にどれだけ実現することができたかを赤ペンで自己評価。MLB大谷翔平選手の基礎を作ったと言われる「目標達成シート」にも似たアプローチを通じ、1年生でも遠慮なく発言できる風通しのいいチーム環境を生み出している。

 ディスカッションの一環として、昨年の敗戦から「1点の重み」と「最後まで戦い抜く大切さ」を学んだ選手たちが自主的に始めた練習がある。セット終盤の20点以降に予想される場面を想定したシミュレーションゲームだ。「20点以降でも勝った気にならないように」(森)と、先行する場面、追いかける場面、競り合う場面、考え得る全ての状況を設定し、そこから最後の25点目まで勝ちきる練習を続けた。選手に直接伝えることはないが、石原監督も「問題を解決しようと徹底する姿は大したものだなと思います」と密かに感心している。

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