「プリンセス・メグ」と呼ばれて 34歳、栗原恵の今 「8割引退」から現役続行の理由
34歳の今、考える「引き際」とは? 中田英寿、三浦知良も「カッコいい」
すぐには返事をせず、じっくりと時間をかけた。入団を決断し、ベテランの必要性について吉原監督と話し合った時も「プレースタイルは違うし、トモさんのようなベテラン選手の像は描けない。背中が大きすぎて、追いつける自信はありません」と正直に打ち明けた。嘘はつきたくなかった。それでも「まだできる。一緒にやろう」の言葉が響いた。覚悟は決まった。
「ここが、最後のバレーの場所になる。選手としても学ぶことは多かったけど、監督としてのトモさんからも、たくさんのことを学んで現役を全うしたいです」
4か月ぶりに戻ってきたコート。「今はいっぱいいっぱいです」と笑う。入団から3か月はシーズンを戦い抜くパワーをつけるべく、体作りを目標に置いている。2か月を過ごした今、ウエイトの重量はもちろん、ボールに体重を乗せる感覚も各段の成長を実感している。「キツいけど、そういう成果は強いモチベーション。まだ伸びしろあるんだなと」と可能性を見いだした。
怪我と隣り合わせだったバレー人生。もちろん、若い時に比べ、できなくなったこともある。「寝れば治るということはない。セルフケアの重要性もあるし、マッサージもそうです。若い時は寝る時間に費やしていたものを同じように過ごしていたら次の日、若い選手と同じように体育館に立てない」。練習前の準備から、練習後のケアまで徹底的にこだわっている。
「一番新人なので、JTのバレーボールをみんなから学ばないといけない。チームそれぞれにルールがある。そこは恥ずかしがらず、分からないことは分からないと聞く。それがコミュニケーションの一つになって、バレーでも生きてくる。まずは学ぶ姿勢。ベテランとして必要な時は自分の引き出しを開けないといけない時が来るけど、まずは自分が一生懸命やることが基本です」
入団を決断するに際し、「ここで現役を全うしたい」と言った。引き際の決断は常にアスリートについて回る。それは簡単なことではない。自身も「もう、いいだろう」と周りに言われるまでやりたくないと思っていた。
「中田英寿さんみたいに求められているうちに綺麗に去るというのも凄くカッコいい。そこは私も凄く悩んだけど、ありがたいことに自分で辞める、辞めないの決断をできる選手であることは凄く幸せ。カズさん(三浦知良)のようにJ2でも常に戦い続けるというのをモットーにやられているのも凄くカッコいい。両方に惹かれる部分があるので、アスリートの生き様は影響されます」
まして、栗原と同様にバレー人気を一身に背負ってきた大山加奈、木村沙織が引退し、同世代の選手が一人、また一人とコートから去って行く。「もちろん、寂しい思いもある。でも、現役で頑張ってきた姿を知っているので、引退して凄く楽しそうにしている彼女たちを見ると『良かったな』と思う部分も『羨ましいな』と思うこともある。ただ……」と言って、真っすぐ前を見た。