初めての夏に全国9位になった1年生 決勝レース直前、村松瑠奈が他8選手に拍手したワケ
過酷な400m障害の魅力は「自分の持ち味を一番生かせる気がして」
他の選手をライバルではなく「高め合う存在」と思っている。
そんなまっすぐな想いは、陸上への純粋な愛によって育まれた。小学校で配られた脚が速くなりたい人向けのかけっこ教室のプリントで関心を持ち、クリニックに通い始めたことがきっかけとなり、5年生から本格的に競技を始めた。
武蔵野東中3年で出場した全中は100メートル障害16位に入ったが、以降は伸び悩んだ。転機は3年の冬。指導者の勧めで400メートル障害に転向した。わずか半年前。当初は1分3~4秒台だったというから、高校入学当初、インターハイは「出場」が目標だったことも頷ける。
現在は自己ベスト1分00秒35。「だんだんと記録が伸びてきて、自然とインターハイの決勝に残れるように頑張ろうと思いました」。転向からまもなく、1年夏に全国の9位になったことは大きな経験と財産になったことだろう。
400メートルを全力で駆け抜け、なおかつ10台の障害も飛ぶ過酷な種目。その魅力を聞くと、笑みを弾けさせた。
「自分は後半に伸びることが多いので、300メートル地点で負けていても、そこから前に出られたら、自分の持ち味を一番生かせる気がして楽しいんです」
高校3年間で目標はインターハイ優勝。今年中から来年には1分を切り、57秒台まで記録を伸ばしたいという。周りからは「抜けてるねって言われます(笑)」という素朴な性格。周りの先輩たちに「ありがとうございました~!」と何度もペコペコと頭を下げ、レース後の待機所を後にした。
陸上をまっすぐに愛する1年生。まっさらなキャンバスに残された成長の余白は、まだ十分にある。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)