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公立校の運動部にスポンサー 米国の部活で確立された「入場券とスポンサービジネス」

公立校につくスポンサー、学校の全運動部を支援する形も多い

<スポンサー>

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 また、公立校の運動部にスポンサーをつけることも広く行われている。各運動部に対してスポンサーがつくこともあるが、その学校の全運動部を支援するスポンサーという形が多いように見受ける。

 スポンサーに経済的支援を求めるために、いかに運動部活動が素晴らしく、重要なことかをアピールし、スポンサーにとってどのような利益があるのかを具体的な数字で説明している。

 ミシガン州の公立校ポート・ヒューロン学校区には、高校が2校ある。学校区が、2高校まとめて、運動部のスポンサーを募集するパンフレットを用意している。それによると、運動部に入っている生徒はそうでない生徒に比べてGPAが0.25ポイント高い、中退率が低い、などと運動部の効能をアピール。さらにどのくらいの広告効果が得られるかも数字で示している。金曜日の夜に行われる試合には観客数3000~6000人。体育館のバスケットボールの試合には500~1200人、男子チームと女子チームあわせて20試合行われるなどに加えて観客層についても説明している。

 このポート・ヒューロン学区の校内のグラウンド、体育館など9箇所に広告を出す最高額のダイヤモンドプランの総計は8000ドル(約88万円)。6箇所に広告を出すプラチナは6000ドル(約66万円)、4箇所のゴールドは3000ドル(約33万円)、2箇所のシルバーは2000ドル(約22万円)、1箇所のブロンズは1000ドル(約11万円)、サイズの小さいものを1箇所に出す500ドル(約5万5000円)がある。

 米国の公教育は16歳、または17歳までを義務教育にしていることもあり、高校には、その地域に住む生徒が、その地域の公立校に通っていることが多い。そのため、日本の高校に比べて地域と密な関係にある。運動部の応援にも、同校の生徒、保護者、地域の人が詰めかけるので、地域に住む人をターゲットにビジネスをしたいのなら、高校に広告を出すというのは悪くないアイデアだ。しかも、地域教育への還元という意味合いもある。

 スポンサー企業からの窓口になっているのは、各高校のアスレチックディレクター。アスレチックディレクターは、日本の学校にはない役職だが、米国では全運動部を統括する学校管理職だ。私が取材した学校は体育科主任や副校長が兼任していた。

 入場券販売の収入の分配や、スポンサーからのお金を管理できるのも、こういった管理職が存在するからだといえる。アスレチックディレクターに報酬を払っているからこそ、スポンサーからお金を運んでくることができるのだろう。そのようなお金の循環を感じる。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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