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陸上部のない高校から生まれた陸上日本一 黒帯から一変、体力づくりで始め「落ちる瞬間」に憑りつかれ――阿南光・井上直哉

ホットスタッフフィールド広島で7月25日から5日間行われた陸上インターハイ。熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、困難な環境の中で競技を続けてきた選手などさまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は男子棒高跳びで優勝した阿南光・井上直哉(3年)。高校に陸上部はなく、母校の中学で3年間練習しながら掴んだ悲願の日本一だった。(取材・文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

初優勝した井上直哉が憑りつかれた棒高跳びの魅力とは【写真:荒川祐史】
初優勝した井上直哉が憑りつかれた棒高跳びの魅力とは【写真:荒川祐史】

陸上・インターハイ 男子棒高跳び/阿南光・井上直哉(3年)

 ホットスタッフフィールド広島で7月25日から5日間行われた陸上インターハイ。熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、困難な環境の中で競技を続けてきた選手などさまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は男子棒高跳びで優勝した阿南光・井上直哉(3年)。高校に陸上部はなく、母校の中学で3年間練習しながら掴んだ悲願の日本一だった。(取材・文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

 夏の高い空に浮かぶ雲を蹴るくらいに、強く、脚を振り上げた。

 男子棒高跳び決勝、5メートル31の2本目。

 ふわっと浮き上がり、体を反転させる。ホットスタッフフィールド広島に訪れる一瞬の静寂。棒を離すと、バーの向こうへ。

「棒高跳びが一番楽しいのは落ちる瞬間」

 あとは成功者だけに許されたときに身を委ねるだけ。その短くも濃密な時間に憑りつかれ、棒高跳びに捧げた井上直哉の3年間があった。

 徳島・阿南で、最初に夢中になったのは柔道だった。背負い投げが得意で、のちに黒帯も取得したほど。畳に汗を垂らした稽古の日々が原点にある。だが、進学した地元の羽ノ浦中は柔道部がなかった。

 陸上、やってみようかな。

 柔道も続ける代わりに、入部した理由は「なんとなく」、強いて言えば「体力づくり」。脚は速い方ではないし、スタミナに自信もない。それならと、ボウルター(棒高跳び選手)を選んだ。

「棒高跳びは助走7割、空中動作3割」。やってみると、細かな動作ひとつで結果が変わる奥深さに惹かれた。

 飽くなき探究心で動作改善を繰り返す日々。すべてはあの「落ちる瞬間」の感覚を味わうため。跳んだ後に宙に浮く刹那、バーを越えた確信とともに落下するコンマ数秒の喜びを目指し、何本も、何時間も、何日も、跳び続けた。

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