担架で運ばれ数分後、応援席もショック「まさか」 ベンチから見届けた悲劇の夏、高校サッカー主将“無念の8分間”――尚志高・西村圭人
高校サッカーのインターハイは、7月26日から8日間、福島県で熱戦が繰り広げられた。地元の代表校の1つで、全国常連の強豪・尚志は1日の準決勝(Jヴィレッジスタジアム)で神村学園(鹿児島)に1-2で敗れ、大会3位に。イレブンをまとめた主将・西村圭人(3年)は同点の後半終了間際、足首を押さえながら担架で運ばれ無念の交代。その数分後、ベンチから悪夢の光景を見つめていた。(取材・文=THE ANSWER編集部・橋本 啓)

高校サッカーインターハイ
高校サッカーのインターハイは、7月26日から8日間、福島県で熱戦が繰り広げられた。地元の代表校の1つで、全国常連の強豪・尚志は1日の準決勝(Jヴィレッジスタジアム)で神村学園(鹿児島)に1-2で敗れ、大会3位に。イレブンをまとめた主将・西村圭人(3年)は同点の後半終了間際、足首を押さえながら担架で運ばれ無念の交代。その数分後、ベンチから悪夢の光景を見つめていた。(取材・文=THE ANSWER編集部・橋本 啓)
台風9号の影響で、雨脚が強まるJヴィレッジスタジアム。史上初の決勝進出という尚志の野望は、思わぬ形で阻まれた。
後半アディショナルタイムは8分を経過。ペナルティーエリアのすぐ外で与えたフリーキックをしのいで、PK戦へ持ち込む――。そんな尚志イレブンの思惑を打ち砕くように、相手のキックは放物線を描いてゴールネットに吸い込まれた。
歓喜に沸く神村学園の応援席と、「まさか……」と静まり返った尚志の応援席。土壇場で1-2と勝ち越された直後、無情にも試合終了のホイッスルが響く。歓喜する神村学園の選手たちの横で、尚志の選手たちはピッチ上で泣き崩れた。
「PKまで持ち込めれば、福島のパワーで勝てたんじゃないかな」(仲村浩二監督)。地元の声援を背に、3回戦、準々決勝とPK戦で勝ち上がってきた尚志。神村学園に球際や個々の技術で違いを見せつけられたとはいえ、思わぬ幕切れを指揮官も悔やんだ。
3年生にとっては高校最後のインターハイ。悪夢の瞬間、キャプテンの西村はピッチにはいなかった。
後半終了間際、西村は相手と競りあった直後にピッチ上で転倒。「×」印をベンチへ送り、同35分に担架で退場した。右足首の怪我を抱えていた中で「ジャンプしようとした時に、その足に乗っかられて、捻ってしまって。捻挫のような感じでした」。
「最後まで戦いたかった」と、ベンチに下がってからのおよそ8分間に無念の思いを強くした。
試合後、周りには涙するチームメートの姿が。高校最後となった夏の全国大会。思わぬアクシデントに見舞われ、最後までチームメートと戦えなかった西村にも、悔しさだけが募った。1つ1つ、言葉を紡ぐ西村からはやりきれない表情がのぞく。それでも気丈に振舞う姿にキャプテンとしての責任感が垣間見えた。
ピッチでは力強いプレーと声がけで牽引。相手のセットプレーの場面では、ゴール前で「集中しよう!」と声を響かせてチーム引き締めた。尚志は前半に先制。しかし後半、同点に追い付かれると「もう1点取ろうっていうよりかは、守ろうっていう気持ちに全体的になってしまった」と唇をかんだ。
地元・福島開催の今大会。トーナメントを1つ、2つと勝ち上がり、過去最高の4強へ。史上初となる「全国決勝」への機運は高まった。東日本大震災で甚大な被害を受けた地でもあり、「地元の方々に勇気や希望を与えようっていうことはずっと言っていました」と、西村は明かす。
その思いはあと一歩届かず。過去最高の3位と実りある大会だったが、「本当はここを勝ってこのファイナルに行きたかったんですけど……」と、本音を吐露。周囲の期待を背負い、まだ見ぬ景色を見たかったとの思いは隠せないでいた。
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