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“試合に出ることのない”学生コーチ 創部60年の強豪校で異例、背番号「10」に込められた想い――向上・関塚礼

高校野球の第107回全国選手権神奈川大会は13日、大和スタジアムで行われた2回戦で、第3シードの向上が橋本・愛川・中央農業の連合チームに10-0の6回コールドで初戦突破。3回戦に進出した。三塁コーチャーとしてチームを鼓舞したのが関塚礼(3年)。チームキャプテン兼学生コーチという異色の存在だ。試合には出られないことを理解した上で入部。唯一無二のポジションで最後の夏を戦う。(取材・文=THE ANSWER編集部・戸田 湧大)

三塁コーチャーとしてチームを鼓舞する向上・関塚礼【写真:戸田湧大】
三塁コーチャーとしてチームを鼓舞する向上・関塚礼【写真:戸田湧大】

第107回全国高校野球選手権・神奈川大会

 高校野球の第107回全国選手権神奈川大会は13日、大和スタジアムで行われた2回戦で、第3シードの向上が橋本・愛川・中央農業の連合チームに10-0の6回コールドで初戦突破。3回戦に進出した。三塁コーチャーとしてチームを鼓舞したのが関塚礼(3年)。チームキャプテン兼学生コーチという異色の存在だ。試合には出られないことを理解した上で入部。唯一無二のポジションで最後の夏を戦う。(取材・文=THE ANSWER編集部・戸田 湧大)

 大きく腕を振り、何度も走者をホームへ導いた。第3シードの向上は初戦の硬さもあり、初回は無安打無得点。「常に笑顔でいよう。みんなでカバーし合おう」。三塁コーチャーの関塚はナインに声をかけ、緊張をほぐした。直後の2回に3点、3回に4点と本領発揮で圧倒。6回コールドの大勝発進に、主将は安堵の表情を見せた。

 小4から始めた野球。中学時代のクラブチームではレギュラーになれず、野球を辞めることも考えた。そんな中3の夏、練習見学に訪れた向上部員の迫力のある熱い挨拶に一目ぼれ。即入部を希望した。それも“学生コーチ”として。母・孝枝さんに「本当に選手としてプレーしなくて良いのか」と何度も念を押されたが、一切迷わなかった。

 創部60年で“学生コーチ”としての入部は唯一。「前例がなく、何をしていいのか全くわからなかった」。監督の補佐役としてノックや練習の準備も最初は手探り。選手に助言するにも、激戦区・神奈川の強豪校で、自分より上手いチームメートに理解してもらえない。それでも、学生の立場を活かし、学校生活も含めた選手の様子を観察。状況や立場を理解した上で適切な言葉をかけた。

 そんな献身的な姿が徐々にナインの心を動かした。そして、非プレーヤーながらチームキャプテンに抜擢。この夏は部員103人から20人のメンバーに選ばれ、背番号「10」を託された。通常は2番手投手が付けることが多く、“学生コーチ”としては異例の待遇だ。平田隆康監督は「彼の存在は欠かせない。発言力や影響力は絶大なものがあった」と全幅の信頼を寄せる。

 試合に出られないことはわかっている。それでも野球に青春を捧げ、強豪校で駆け抜けた3年間。次戦は16日、県相模原と対戦する。ただ、関塚のやるべきことは変わらない。「絶対にチームに一番貢献する」。悲願の甲子園出場へ、向上にはこの背番号10が必要不可欠だ。

(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)

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