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不登校だった女子高生が、野球部に入って救われた話 枯れた声、万歳、大粒の涙…全てが青春の証し――相模向陽館・真柳千夏

高校野球の第107回全国選手権神奈川大会は12日、俣野公園・横浜薬大スタジアムで行われた2回戦で、大和東と相模向陽館の連合チームが磯子工業に1-7で敗れた。ベンチから身を乗り出し、声を枯らしたのがチーム唯一の女子部員・真柳千夏(相模向陽館3年)。不登校も経験した過去を持つ自分を救ってくれた高校野球に、最後まで感謝の思いを示し続けた。(取材・文=THE ANSWER編集部・戸田 湧大)

記録員としてチームをベンチから支えた相模向陽館・真柳千夏【写真:戸田湧大】
記録員としてチームをベンチから支えた相模向陽館・真柳千夏【写真:戸田湧大】

第107回全国高校野球選手権・神奈川大会

 高校野球の第107回全国選手権神奈川大会は12日、俣野公園・横浜薬大スタジアムで行われた2回戦で、大和東と相模向陽館の連合チームが磯子工業に1-7で敗れた。ベンチから身を乗り出し、声を枯らしたのがチーム唯一の女子部員・真柳千夏(相模向陽館3年)。不登校も経験した過去を持つ自分を救ってくれた高校野球に、最後まで感謝の思いを示し続けた。(取材・文=THE ANSWER編集部・戸田 湧大)

「良い球いってるよー!」

 4回までに4失点の苦しい展開でも、ベンチからは真柳の明るい声が絶えなかった。願いが通じたのは9回、連合チームは待望の初得点。「1点取れたことが本当に嬉しかった」。万歳で喜びを表現したが、高校ラストゲームとなり大粒の涙も流した。

 唯一の女子部員。公式戦には出られないが、練習試合では途中出場からプレーすることも。「出れないことはちょっと悔しい」。本当は最後の夏のグラウンドに立ちたかったが、「高校球児としてやることをやる」とスコアブックを片手に記録員としての役割を全うした。

 体験入部をきっかけに、高校から野球を始めた。相模向陽館は定時制。練習は学校終わりの1時間半程度で、部員も3人しかいない。部員が集まらない日は1人で汗を流し、ノックの練習として選手の代わりに教員相手にひたすらバットを振り続けたこともあった。3年間の地道な努力をそばで見守ってきた鈴木健太監督も「野球人として尊敬しますね」と目を細める。

 同校は小、中学校時代に不登校を経験した生徒を幅広く受け入れている。幼い頃、父の死を経験した真柳もその一人だ。人間不信に陥りそうな時期に出会った野球に救われた。「人間関係が上手くいき始めて、明るくなって変わることができた」。グラウンドには確かに“自分の居場所”があった。

 高校卒業後も野球を続けるため、女子野球部がある大学へ進学予定だ。「まだ野球がやりたい」。自分を変えてくれた高校野球への感謝は、次のステージでも決して忘れない。

(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)

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