高校野球部が“学会発表”を続ける理由 「引退した時、何が残るか」研究活動で伸ばす生きる力

イベント主催で学ぶ課題解決「社会的に必要な能力を手に」
継続して研究しているテーマに「野球人口の減少に対して高校生は何をできるか」がある。1月26日には、小学校低学年の児童70人とともに、同高グラウンドで野球体験イベントを開催した。部員は野球未経験の児童にどうやって来てもらうかを考えた末に、地域の小学校が行う学童保育の場を訪れPRした。200枚ほどのビラを配布し、来てくれたのは8人。これなどは問題を見つけて解決し、業務を遂行していく力そのものだ。
選手も、競技引退後まで見て活動に取り組む。研究やイベント開催の意味について、稲毛瞭介(2年)は「いざ野球を引退した時、何が残るかということだと思うんです。野球の技術のほかにも、社会的に必要な能力を手にすることになります。プレゼンテーションとか、人との関わり方とか、僕たちには今後求められると思うんです」と理路整然と口にする。
昨年末の野球学会では、やり投げと投球動作の共通点という技術的なテーマを発表した。陸上部に、インターハイにも出場するやり投げ選手がいたのがきっかけだった。やり投げの動きを練習に取り入れているが選手が、プロ野球界にもいる。ただ真似するのではなく、目的を持って練習に取り入れるため、野球の投球動作にどのように影響するのかを動作解析ソフトまで用いて明らかにしていった。
投球練習用の小さなやり「フレーチャ」を投げる前後に投球練習を行い、動きの変化をまとめた。やり投げを行ってからの投球では、動作の際に体幹の移動速度が上がるという効果を確認できた。発表にも参加した中川泰一(2年)は「硬球は145グラム、やりは600グラムほどあるのでその影響もあるとは思いますが、速度は上がることが確認できました」。主将の萬蒼吾(2年)は「じゃあ変化球にも生かせるのか、サイドスローやアンダースローの投手はどうなんだと、さらにいろいろ考えますよね」と、さらに関心を広げていこうとしている。
実は、野球を研究する高校生は全国で増えている。昨年の日本野球学会では、高校生の発表が実に24組にも上った。他校の研究を見ることで、新たな関心を持つこともある。萬は「自分たちが見ても、非常に共感できるものが多かったです。同い年で、同じような感覚の中で日々疑問がある。僕らの代には女子マネジャーがいないのでその話とか、低反発バットの話とか。そのままチームに落とせる話が多いんです」。考え抜く力を備えた球児はさらに野球を進化させ、社会に羽ばたいていく。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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