最強帝京大の喋れなかった主将の言葉力 4連覇の裏で悩んだ、部員150人へ「どうしたら伝わるか」【ラグビー大学選手権】
青木が2点差ピンチで伝えた言葉
2日の準決勝から中10日。スクラムを封印された対抗戦の悪夢が蘇るメンバーがいた。PR森山飛翔(2年)は「凄い恐怖感。早稲田さんに植えつけられたものがあった」と当時の試合映像を見返すのも躊躇。連日スクラムを組み、チームで弱気を吹き飛ばした。
リベンジマッチには最高の舞台。大一番の朝、青木は唱えた。「今日が最後か」。心は不思議と晴れやかだった。
「ラグビーをしてきた中で一番気持ちのいい起き方。すっきりしている。プレッシャーもあるけど、純粋に大学ラグビーの最後を楽しみたいという気持ちだけ。このチームで日本一になれる」
試合直前のロッカー。みんなに告げた言葉はシンプルだった。
「勝っても負けても最後。思い切ってラグビーをしよう」
ホイッスル直後、自ら暴れ回った。前半5分、青木が右サイドで相手タックルをふっ飛ばす激走。左に回し、最後は森山の先制トライに繋げた。7-0の同12分には、残り5メートルから中央突破。相手3人を引きずりながら強引にトライへ持ち込み、パフォーマンスで引っ張った。
しかし、速いパスを展開する早大に2トライを許し、前半24分に14-12の2点差。円陣を組み、青木は伝えた。「引きずっても何も生まれない。自分たちが思っているラグビーをしよう」。スタンドの控え部員を煽り、声援を膨らませた。
前半終了後のロッカーでも、淀みなく言葉が出てくる。「真っ向勝負では互角になる。もっと賢くラグビーをしよう」。パスオプションを増やし、防御をずらす戦術を指示。メンバー23人の意思が固まった。